混成競技出身だから可能な2種目挑戦
女子のハードル選手は、海外選手もスプリント種目や走幅跳で活躍してきた。G.ディーバース(米国)は93年シュツットガルト世界陸上で、100mハードルと100mで金メダルを取ったことがある。
女子ハードルは高さが83.8cmで、男子の106.7cmと比べ、身長比で見ても低い。踏み切る角度が低く、ハードリングが比較的走る動きに近いことが理由だと言われている。国内で100mハードルと走幅跳の2種目で活躍する選手がよく見られるのも、ハードルへ踏み切る角度が男子より近いからだと思われる。
両立できるのは泉谷が、混成競技で高校時代に日本一になった能力があるからだろう。110mハードルのように踏み切り角度が大きくても、走幅跳のように小さくても強い踏み切りができる。泉谷も「僕のいいところは、色んな種目ができること」と言う。
「110mハードルと走幅跳ができる選手は、やればいる思うのですが、実際にやろうとしている選手はいません。僕は単純に2種目で強くなりたい気持ちがありますし、アピールポイントにもなると思います。自分のいいところを最大限に発揮したい」
実際のところ2種目の挑戦は簡単なことではない。泉谷自身、「現実的に厳しいという感じ方もしています」と正直に話す。それでも全日本実業団陸上で2種目への挑戦を明言した。それだけ、やってみたい気持ちが強くなった。日本人では陸上競技史上初めて、世界的に見ても極めて珍しい挑戦を、来季の泉谷は実行に移す。
(TEXT by 寺田辰朗 /フリーライター)