「事後対応より予防の方が重要」いじめで娘を亡くした父親の思い


名古屋市に住む齋藤信太郎さんは2018年1月、当時中学1年生だった娘の華子さんを失いました。自宅マンションから飛び降り、自ら命を絶ったのです。背景にあったのは、学校で受けたいじめでした。

(華子さんの父・齋藤信太郎さん)
「(娘は)いろいろな葛藤や苦しみがあって、1人で耐えていて耐えきれなくなったと思う。(娘を亡くしてから)何かやれることはなかったのかなとずっと考えている」

「学校に行かないのもありだし、無理していかなくてもいい」と考えている齋藤さん。できるなら華子さんにもそうしてほしかったと言います。

華子さんの異変を察知できなかった後悔を口にする一方、「いじめが起こった後の事後対応より、予防の方が重要」と話し、行政には問題の芽を早期に摘む仕組み作りを求めています。


名古屋市では、市独自の相談窓口「なごもっか」を設けたり、全小中学校にスクールカウンセラーを配置したりしています。しかし、子どもの自殺者数は毎年10人以上と一向に減らない現実があります。

(名古屋市教育委員会・坪田知広教育長)
「行きたくなる学校作りをもっと推進すべきというのが大前提ですけど、それでもやっぱり学校に行きたくい、行けないという状況なら無理に学校に行く必要はない」

何よりも辛かった2学期始まりの経験をマンガで伝える


漫画家の棚園正一さん(40歳)。2015年、初めて単行本「学校へ行けない僕と9人の先生」を出版しました。

棚園さんは、学校の先生や同級生とうまく馴染めず、小学校と中学校の9年間不登校に。“学校に行きたくない”と感じている子どもや保護者の助けになればと、自分の体験を漫画にしました。棚園さんも2学期の始まりが何より辛かったと言います。

(漫画家・棚園正一さん)
「すごく憂鬱でした。学校に行けないとか、みんなと同じことができない自分をまた突きつけられるようで、いつもの毎日が始まるとそれがすごく嫌でした」

月に何度か講演会を開き、死ぬことも考えた自分の体験を不登校の子どもや保護者、教師に直接伝える活動も行っています。

棚園さんは8月、新刊の漫画を出版しました。タイトルは「学校に行きたくない君へ」。著名人や一般の方の不登校や引きこもり体験を漫画にして紹介しています。

この漫画には、「不登校はダメだと自分を責めなくていい」というメッセージを込められています。



(漫画家・棚園正一さん) 
「(学校に)無理して行く必要はないし、行きたくなったら行けばいい。明日から頑張らなきゃいけないと思わなくても、頑張れるときから始めればいいと思います」

どの子どもも学校に通える環境をどう作るのか。社会の重い課題が浮かび上がってきます。

CBCテレビ「チャント!」8月31日放送より