■「プーチンの本音はリベラルな西洋主義者ですが、もし彼が自分の望むことを実現し始めたら、クレムリンから追い出されるでしょう」
侵攻長期化は戦場だけでなくロシア国内でも様々な影響をもたらしている。そこにどう関係しているのかは不明だが、先月20日、ロシアの極右思想家の娘が乗った車が爆破された。犯人はわかっていないが、いくつか想定されている犯人像がある。
(1)ウクライナ犯行説。すでにFSBがウクライナ側の容疑者を特定したとされるが、これはウクライナのメリットが考えられない
(2)反プーチン勢力犯行説。国民共和国軍が犯行声明を出したとされるが、国民共和国軍なる組織の存在すらはっきりしていない。
(3)ロシアによる自作自演説。目的は何なのか。
現在(3)である可能性が高いという専門家は少なくない。そしてその理由は、極右勢力が“特別軍事作戦”など生ぬるい対応でなく、戦争を宣言して総動員して戦争をしろと主張していることがプーチン氏にとって都合の良くないものだとみられるからだという。番組では、これまであまり知られていない極右思想家ドゥーギン氏に注目した。
スタジオゲストの朝日新聞、駒木明義氏は、2018年、この人物にインタビューしている。そこでプーチン氏に対し意外な見方を彼がしていることが分かった。
ロシア極右思想家 アレクサンドル・ドゥーギン氏
「スターリンと大違いでプーチンは非常に実利的な政治家です。スターリンはまさに本物の大きくて強い独裁者でしたが、プーチンがどちらかというとプラグマティスト(実用主義者)です。リベラルの準備ができていない国ではリベラリズムはあり得ないということを理解しているので見せかけの保守主義を実行しているのです。プーチンの本音はリベラルな西洋主義者ですが、もし彼が自分の望むことを実現し始めたら、プーチンはクレムリンから追い出されるでしょう。」

クリミアを併合し、欧米と対抗し、ウクライナに侵攻したプーチン氏が、本来は西洋主義のリベラルな人物だという。駒木氏の解釈によれば、それが本心かは不明だが、ドゥーギン氏はそう見ていると。
朝日新聞社 駒木義明 論説委員
「エリツィンの後継者として出てきた時は確かにリベラルなことを言っていた。しかし、ロシアの国民が“強いロシア”を望んでいるのでプーチンはそれを与えている。プーチンは優秀な広告マンであり、社会が望むものを与えるんだと、本質とは違うことをやっているんだと、ドゥーギンは言っている。」
真のリベラル派からは独裁者と非難されるプーチン氏。右派からは西洋主義、広告マンと揶揄されるプーチン氏。意外にも板挟みの実態が見えてきた。
防衛研究所 兵頭慎治 政策研究部長
「私は軍の中にも右派的な思想の人はいると思う。プーチンは生ぬるいと。このまま長期化してはロシア兵の犠牲がどんどん拡大する。プーチンはもっと強硬に総動員かけてすべきだっていう人は、中枢に近い人にもいるんじゃないかと…」
この強硬派の声は、実は反対派の声よりも厄介だというのは服部倫卓氏だ。
ロシアNIS経済研究所 服部倫卓 所長
「戦争反対の声はプーチンとしては弾圧すればいいんですが、強硬派の“もっと徹底的にやれ”っていうのを弾圧するのは矛盾しているわけです。」

悩ましいプーチン氏は、果たしてどこへ向かうのだろうか?そのロシアで今、軍事侵攻の報道が減少しているという。どういうことなのか?