今年7月に実施された南米・ベネズエラの大統領選をめぐって、世界各国の対応が分かれている。アメリカや欧州の主要国が投票の詳細を公表するよう求めている一方、中国は当選した大統領にいち早く祝電を送った。こうした動きについて、東アジア情勢に詳しい、飯田和郎・元RKB解説委員長が9月12日に出演したRKBラジオ『田畑竜介 Grooooow Up』でコメントした。

抗議行動を徹底弾圧し混乱続くベネズエラ

地球の裏側に位置するベネズエラだが、日本人にとって縁遠いわけではない。その一つがベネズエラ出身のプロ野球選手だ。現役ではヤクルトの打者オスナ、オリックスはクローザーのマチャドをはじめ、ベネズエラ出身選手が4人もいる。ホークスにかつて在籍した強打者、ペタジーニもベネズエラ出身だ。

そのベネズエラといえば、9月8日、大きなニュースが飛び込んできた。7月の大統領選挙に出馬した野党のゴンザレス氏が、スペインに亡命した。ベネズエラの公用語がスペイン語であることからも分かるように、亡命先のスペインはかつての宗主国だ。

大統領選は7月28日に実施された。中央選挙管理委員会は根拠を示さないまま、現職の左派、マドゥロ氏が過半数の票を得て当選したと発表。これを受けて、マドゥロ氏も勝利宣言した。中央選管は、これまで2期務めたマドゥロ氏が牛耳ってきた。

一方の野党側は、ゴンサレス氏が7割近くの票を得ていたと主張している。事前の世論調査でも、ゴンザレス氏が大きくリードしていた。アメリカや欧州の主要国は、得票の詳細を公表するように、中央選管に求めているが、公表されていない。

投票から1か月半が経過するが、ベネズエラ国内では野党、またその支持者らによる抗議行動で、死者も出ている。ベネズエラの検察は9月2日、文書を偽造したなどとして、ゴンザレス氏に逮捕状を取った。だからゴンザレス氏は、身の危険を感じて、ベネズエラを脱出・亡命したわけだ。

「クリスマスを10月に繰り上げる」

マドゥロ氏は、野党やその支持者を徹底的に弾圧し、当選を既成事実にしようとしている。一方で国民を懐柔しようとしている。カトリック教徒が多い国民に向けて、マドゥロ氏は「12月のクリスマスを、10月に繰り上げる」と宣言をした。

ベネズエラでは、政府がクリスマスに合わせ、国民に食べ物などを配布してきた。大統領選挙のあとの混乱が続くなか、国民の不満を和らげる効果を狙っているのだろう。

マドゥロ氏は2013年に暫定大統領に就任したが、実は、前回2018年の大統領選挙でも、そのプロセスの正当性に、国際社会から疑義を呈されていた。大統領の任期は6年。来年1月から3期目に入るから、このまま行くと、少なくとも2031年までは最高権力者の地位にある。

日本政府は9月4日に、外務省が談話を発表している。「ベネズエラの中央選管は選挙結果の信頼性を確保できる、必要な情報を示していない。情報を公表するよう求める国内外の声を、我が国(=日本)も共有する」。欧米など多くの国際社会と同じ立場だ。