若者のビール離れが言われて久しい。そんな中、若者の支持を集め7年連続で売り上げを伸ばしているビールがある。今から45年前の1977年に誕生したサッポロビールの黒ラベルだ。年配者の飲み物というイメージのビールを若者に浸透させた「ブランド若返り」のカギはどこにあるのか、野瀬裕之社長に聞いた。

■広告では商品を語らず人生を語る

2022年上半期、ビール大手4社を合わせたビール類の販売数量が前年に比べ3%増加した。サッポロビールは主力商品のサッポロ生ビール黒ラベルの販売数量が前年比12%増と好調で、6年ぶりにビール類の販売数量を伸ばしている。

ーーコロナ禍でも伸びたということか?

サッポロビール 野瀬裕之社長:
おかげさまで順調に来ています。もともと2010年ぐらいからビール強化、特に黒ラベルは主力商品なのでしっかり取り組むということで会社を挙げてやってきていました。その成果は2015年くらいからでしょうか、着実に特に家庭用の缶で需要が伸びてきました。ーー若者のビール離れと言われる中、20代の若者がスーパーや通販などで黒ラベルを選ぶ割合がこの10年で2.2倍に増えている。

サッポロビール 野瀬裕之社長:
黒ラベルはブランドの若返りと言えばいいのでしょうか、ビールは年配の方が飲むイメージを若い方は持っていらっしゃいましたが、ブランドとしての若返りができた稀な例なのかもしれないと思って、自信を持ってやらせてもらっています。私は黒ラベルが好きでこの会社に入社したのですが、味のご評価は特に飲食店のオーナー様やスーパーマーケット等のいわゆるお酒に関わる方は本当においしいといつもおっしゃっていただいていました。あわせて、ブランドの情緒的な価値を上げていこうということで「大人エレベーター」という広告をもう10年ちょっとやらせていただいています。ーーいまどの企業も若者の心をつかめ、Z世代をつかめということをやっているが、なかなか難しい。「黒ラベル」成功の秘訣は?

サッポロビール 野瀬裕之社長:
テレビコマーシャルという観点、コミュニケーションということだけで言うと、あのコマーシャルは味覚のことはほぼ語っていません。飲むシーンは当然ありますが、「コク」とか「キレ」とか「美味しい」とか一切言っていません。商品を語らず人生を語る。あまり押し付けがましくしない。押し付けない感じがいまの若い人たちの共感を得ているのではないでしょうか。

若い方たちにおいしさを体験していただく、リアルの体験の場もたくさん作ってきました。生ビール黒ラベルを格好よく飲んでいただく空間を作り、お洒落な空間で若い方たちに飲んでいただけているところをどんどん拡散していくと。そういうところが若い人たちに響いて「ビールってこんなに美味しいのか」と思っていただいたのが今に至ると感じています。生ビールのおいしさ、生ビールの感動体験をもっと知っていただくためのブランドとして、生ビールの王道みたいなブランドであり続けたいと思っています。