必ず破綻するスキーム

もちろんそんなうまい話があるわけありません。
ネズミ講のシステムは、会員数が無限にいてはじめて成り立ちます。しかし、人口は有限です。このシステムで17代目になると、孫ネズミの数は42億9496万7296人に。当時の世界人口(約35億人)を超えてしまうのです。

しかし、それでも信じる人は後を絶ちませんでした。ときは高度成長のまっただ中、人々は「カネがカネを生む」という現象を様々なところで見聞きし、それが最も効率的に成り立っているのが「天下一家の会」……と、そう見えてしまったのかもしれません。

集めたカネは総計1900億円。現在の価値に直すと約1兆円にあたります。
しかし、次第に各地で苦情が相次ぐようになりました。待てど暮らせどカネが送られてこないなどのトラブルも頻発します。

さすがに行政も放ってはおけません。主宰者は脱税容疑などで逮捕、起訴されました。しかし、詐欺罪や出資法違反など、より重い罪を問うには要件が足りません。そもそもネズミ講自体が犯罪となっていないことから、根本的な根絶には至りませんでした。

一方、天下一家の会は10周年式典を日本武道館で開き、1万5000人もの会員を集めて盛大に祝ったのです。

思えば、このときが天下一家の会、絶頂期でした。