感染出産は「原則帝王切開」から「臨機応変」へ。現場では…

―――陽性となってしまった妊婦さんの出産についてなんですけども、去年12月20日までのガイドラインには「施設によって原則帝王切開とすることもやむを得ない」というふうに書いてあったんですが、現在ちょっと中身が変わっており「施設によって帝王切開するか、経膣分娩(自然分娩)にするか、臨機応変に対応することが望ましい」と変わっていますが、実際はどうなのかといった日本産科婦人科学会の調査があります。

―――新型コロナを理由とした帝王切開の割合は、第4波までは感染による帝王切開62%でした。第5波になって59%、第6波61%ということで、このガイドラインが改定されても帝王切開で出産する陽性の妊婦さんの比率というのは変わっていないということです。ちなみに感染していない妊婦さんの帝王切開は約2割だと厚生労働省はしています。だから陽性になって、帝王切開で出産する妊婦さんがいかに多いかということなんですけども。

(城戸康年教授)
もちろん、お母さんと子どもの命、出産を守るために帝王切開が医学的に選択される場合は選択されて、従来なら2割程度が行われてるということです。これに対して、コロナ感染が起きると、自然分娩をすると時間がかかりますから、そうすると周りのスタッフも皆、感染の恐れが高くなるわけです。それが理由で、ひとたび院内で感染が起こってしまえば、以降の分娩なりが大きく障害を受けるので、これまで産科病棟というか、クリニックは、コロナに感染してしまった妊婦さんの自然分娩を長時間扱うことをやはり恐れてたんです。それで苦渋の決断として、帝王切開を選択せざるを得なかったというのがあったのでは、という側面があります。


―――帝王切開する必要がない妊婦にまで強要することになり、これは自己決定権の著しい制限になっていると、考え方に一つ問題があるんじゃないかという点は。

そうなんです。病院も感染を広げないために、苦渋の決断だったわけですが、今後どちらをどうバランスを取っていくかっていうのは、ますます考えていかなければならないことなんだと思います。妊娠出産に関わらず全てのことで病院自体は、ゼロコロナで行ってるんですね。今は妊娠出産の話題ですが、これが例えば、心筋梗塞の治療をどうするかっていうのも、結局は同じで、緊急を要する医療行為に対して、やらなければならないんですけど、それが感染者を扱うと同時に医療従事者に感染する恐れがあると病院としては、なかなかその次にみんなが困ってしまうので、何とかしなければならないと。病気ごとにこういう事情があって、まだ日本は社会もまだウィズコロナじゃありませんから、なかなか病院は今、厳しいところです。