芸術や音楽で東日本大震災からの復興を後押しするイベント、「リボーンアート・フェスティバル」が、今月20日から宮城県石巻市で開かれています。被災地に展示されている作品に込めたアーティストの思いを取材しました。

8月4日、石巻市の渡波地区。

元水産加工会社の倉庫では…

水産加工会社があった倉庫で、大きなモニュメントがつくられていました。京都府出身のアーティスト、小谷元彦さんの作品です。
天井に届きそうな作品は高さがおよそ5・6メートル。東日本大震災の直後、支援に駆けつけた人たちの姿を、両手を広げる天使に重ね合わせました。


小谷元彦さん:
「なんとなく救済のイメージがあったり、人が駆けつけるイメージがあり、その時にサーフボードで来ているような、海を渡って来るような感じの雰囲気がぼんやりと頭の中に出てきた」


8月20日、「リボーンアート・フェスティバル」はテープカットで幕を開けました。


音楽プロデューサーの小林武史さんを中心に、被災地、石巻で2017年から2年ごとに開かれています。

リボーンアート・フェスティバル 小林武史実行委員長:
「(被災地は)大変だから、かわいそうだから、という思いは少し卒業して、ここに根付いている価値をもっと大事にしていく」


リボーンアートは、芸術や音楽、食で復興を後押しする総合芸術祭です。新型コロナの影響から、3回目の今回は会期を2回に分け、去年夏の前期と、今年夏の後期で行なっています。


石巻市民:
「(震災から)10年が経ったいまでも、このような企画をしてもらいありがたい」


今回は、国内外で活躍する21組が、石巻市内の5つのエリアで26のアート作品を展示しています。

初めて会場となった南浜津波復興祈念公園とその周辺。
「石巻タワー」と名付けられたこちらの作品は、高さがおよそ7・5メートルです。


制作した芸術家 川俣正さん:
「(被災地に)何か立ち上がるものがほしいと思った。塔は人の意志を感じる上に向かっていくということもあって」


小林武史さんも自然と音楽を融合し出品しました。


石巻市萩浜、小林さんの音楽が流れる海岸線を歩くと、その道の先には・・・。


名和晃平さんの作品、White Deer があります。


ここでは、スガシカオさんのライブイベントも行われました。


岐阜県から訪れた人:
「白いシカで。すごくきれいで、空を眺めていいなと思う」


滋賀県から訪れた人:
「復興した街並みも見て回りたい」


萩浜にあるリボーンアート・ダイニングは、日常に溢れた「命をいただくこと」の尊さを体験する場所です。


シカの肉など、地元食材を扱います。


ここでは、全国の著名なシェフが腕ふるいます。

ゲストシェフ 渡真利泰洋さん:
「この土地で感じたのはミネラルが豊富な場所で、(調理に)そこだけは意識しました」


8月19日、石巻市中央にあるアート作品を訪れました。


「植樹の体験もあるし、漁の船に乗せてもらいイワシがたくさん獲れるのを見させてもらった」と語る三重県出身の芸術家、弓指寛治さん。


閉店した鮮魚店をギャラリーとしました。野球少年が通ったバッティングセンターに、地域に親しまれたガソリンスタンド。


「慰霊」や「自死」をテーマに活動をする弓指さんは、震災で失ったまちなみも作品として残そうと、去年11月以降、度々石巻を訪れていました。

弓指寛治さん:
「いまはなくなってしまったものがたくさんある。でも、地元の人たちから聞いたエピソードの中に確かに建物があったし記憶はある。作品はこの石巻の人たちに見てほしい。(震災前の光景を)知っていると言ってくれたら本当にうれしい」


アーティストのさまざまな思いが込められたリボーンアート・フェスティバル。
10月2日まで、アート作品が被災地・石巻を彩ります。