■『どっちがお兄ちゃん?』『不妊治療?』多胎の親へのNGワード
ーー双子を連れて歩いていると目立つからか声をかけられる機会が多い気がします。
水野代表:
「大変ですね」と声をかけてもらうことは多いですよね。全然悪気はなく、聞かないで欲しいと思う言葉をかけられることもあります。「どっちがお兄ちゃん?」と聞かれることも多いですが、私は平等に育てたいから「お兄ちゃん・弟」という言い方はしていないです。「不妊治療ですか?」なんて単胎の人には絶対聞かないだろうことを聞かれることもありますよね。そういったNGワードも含めて、多胎育児についてもっと知ってもらいたいと周知活動をしています。
ーー子どもが赤ちゃんだった頃「同時に泣いて大変でしょう」とよく言われたのですが、私は交互に泣かれるのが辛かった。この永遠に泣き続けるのはいつまで続くのだろうと。
水野代表:
交互に泣かれるのも大変。同時は同時で、一人で見ていると手が足りないから、もう私も泣くみたいなこともありました。どっちにしても地獄ですね。
ーー育児の負担を減らそうと、国も多胎育児の支援を行っています。厚生労働省は2020年度から支援事業を行う自治体に対して費用の半額を補助しています。行政の取り組みの課題はどこにありますか。
水野代表:
地域の格差が激しいことですね。例えば東京都では産後のサポートが手厚かったり、その後も補助が出たりしています。
一方で、自治体によっては支援事業をやりたいけれど、多胎はマイノリティーだから担い手がいなくてできないというところもあります。そこで、自治体から依頼を受けて、家庭訪問をする保健師さんなどに講義もしているんです。
■「セルフミルクだって大丈夫」双子育児で得た経験がもっと伝われば
水野代表:
ついつい双子の子育ては大変ですという話が多くなってしまうのですが、双子三つ子だから良かったこともたくさんあって、それも知ってもらいたいんです。双子で良かったと思うことはありますよね?
ーーわが家の場合はだいぶ自我の出てきた2歳になってから保育園に行き始めたので、一人だったら行きたがらずに大変だったと思います。二人が同じクラスにいるからこそ心強い面があるのではないでしょうか。
水野代表:
うちもそれはめちゃくちゃ助かっています。親友がずっと一緒にいるみたいな。あと、私は「双子はとにかく可愛いな」と思っていて。小さい赤ちゃんが二人いるのも可愛い。少し大きくなって、日本語が出る前に何か赤ちゃんの言葉でお話するじゃないですか。それで二人で笑い合っていたりするのを見て、双子を産んで良かったなと思いました。私は生後半年くらいまでが一番しんどくて、生まれてからしばらくは記憶もないのですが。大きくなってだんだんご褒美が返ってくるという感覚ですね。
ーー多胎育児は大変だからこそ得られるものもたくさんありますよね
水野代表:
社会的に良い影響があるなと思うのは、双子とか三つ子だと母親だけではなくて、やらざるを得ないから父親の育児の割合が増えていきますよね。あるいは誰かに頼らないと回らないから、親だったり兄弟だったり周りの人に手伝ってもらう機会も多くなります。
あとは、例えば双子だと子供に勝手に哺乳瓶で飲ませるセルフミルクもやるじゃないですか。それでもちゃんと育つし愛情が足りないとは思わない。そういう双子育児で得た色々な経験が単胎で育てている人にも伝わって、そこは頑張り過ぎなくても大丈夫だとか伝わればいいなと思っています。
