トランプ・トレード 有望セクターは?
――ではトランプ氏が返り咲いた場合、値上がりしそうなセクターは?
ニッセイ基礎研究所 井出真吾氏:
単純に防衛関連がまず買われやすい。足元でもだいぶ買われてきた。それから石油、石炭など化石燃料系も足元で上がっている。あとは規制緩和という意味で金融関連も買われやすくなると思う。要は、バイデン政権・民主党政権であまり恩恵を受けられなかったセクターが、逆にトランプ政権・共和党政権になったら買われやすいという割と単純な構図だと思う。
一つ気をつけなければならないのが、ハイテク関連。特に半導体は、二面性があると思っている。すなわちアメリカのハイテク企業は優遇される、守られるが、海外のハイテク企業は少し締め出されがちだと思う。例えばTSMCとか。もう既にトランプ氏は「台湾独り占めでけしからん」と言っている。TSMCやサムソンなどは若干厳しいかもしれない。日本の半導体メーカーは正直まだ読めない。日本の政治行政がトランプ政権といかに上手に渡り合っていけるかどうか、ここに鍵がある。政治家と企業と行政が三位一体となって、トランプ政権と渡り合っていく。トランプ氏でなくてもハリス氏であろうともアメリカと上手に交渉していくことに尽きると思う。
――新NISAを始めたばかりの人は、トランプ相場の中でどう投資するのがよいか。
ニッセイ基礎研究所 井出真吾氏:
足元は株価が揺らいでいるが、トランプ政権になったらアメリカが強くなる、MAGAだということで長期的にはアメリカ株が上がるということでよいが、その効果が出るのは、2025年の後半以降だと思う。大統領に就任するのも2025年の1月。そこからいろんな政策を打っていって効果が出るのは多分2025年後半だろうと。問題はそれまでの間にアメリカの景気が崩れないかどうかが心配。消費が少し弱まってきている。GDPは強めに伸びたが、アメリカの個人消費のデータを丁寧に見ると少しスローダウンしてきている。だからもし景気の減速色が強まるようなことがあると目先もう1回アメリカ株が大きめに下がる。S&P500で5000ポイント割れのリスクはあると思う。ただ、中長期的にはまたアメリカ株を中心に上がっていくというトレンド自体は変わらないので、とにかく積立投資の場合は途中で止めない。一旦お休みしようかとか。SNSの書き込みはインプ稼ぎ(閲覧数稼ぎ)だと思っている。あんなのに惑わされる必要ない。一般の人は何も難しいこと考えずに、淡々と機械的に積み立てていく。これが一番いいと思う。(最初にした設定を変えずに放置)遠くを見続ける。近くを見たらダメ。

――最後に投資のプロの井出氏から相場の格言です。「売るべし、買うべし、休むべし」。これはどういう意味でしょう。
ニッセイ基礎研究所 井出真吾氏:
相場の見通しが、極度に不透明なときはもう売ったり買ったりしないで、一旦お休みする。「休むも相場」という格言もある。
自分の中で大した根拠もなく、売ったり買ったりして失敗したときは、本当に悲しいだけではなく、何が失敗だったかもわからないから反省すらできない。反省できればまたそれを次に生かして投資できるが、根拠レスで売ったり買ったりするぐらいだったら、一旦思い切ってお休みしましょう、という格言。
ただこれはあくまで、短期投資向けの格言であって、積み立て投資の場合は休んでは駄目。それから投資先をコロコロ変えたりとか、投資額をコロコロ増やしたり減らしたりは必要ない。毎月できれば定額というのがいいと思う。そのときの自分の懐事情に合わせて「今月は1万円多くしようか」とか「今月は出費がかさんだから少し減らそうか」とか、多少あってもいいかもしれないが、投資判断で上がりそう、下がりそうで積立額を変えるのはおすすめしていない。
それよりも大事なのは、世の中の大きな流れ。もしくはその流れの変化をつかむこと。底流・潮流みたいな話。変化に応じて投資先を変えるというのはありだ。例えば今、中国に積極的に投資しようと考える人はほとんどいない。ところが8年前、トランプが1期目当選したときはまだ中国金ピカ時代。GDPでいったら2030年頃にもアメリカを追い抜かすのではないかとか言われていた時代。それが今やどうか。そういう大きな変化、インド経済の発展など、そういった大きな変化に合わせて投資先を少し変えていくっていうのは大事なことだが、暗に株価が上がった、下がったで、売ったり、買ったりは、一般の人にはおすすめしていない。