銃撃事件でトランプ前大統領の求心力が高まり、「ほぼトラ」とまで言われた状況が一転。バイデン氏の大統領選撤退を受け、一気に旋風を巻き起こしているのがカマラ・ハリス副大統領です。

いったいどんな人物なのか、ユニークな生い立ちや“初めてづくし”のキャリアをひも解きます。SNSで急速に拡散されている動画や、「ココナッツ」の絵文字が象徴する若者からの指示の背景とは?手作り解説でお伝えします。

差別を目の当たりにしてきた移民2世

急展開で民主党の大統領候補になる見通しとなったハリス氏。彼女を支持するシンボルとして、若者の間で急速に広まっているのがココナッツの絵文字です。

きっかけとなったのは、ハリス氏が子どものころ「あなたはココナッツみたいに、ただ木から落ちてきたわけじゃないのよ」と母親に諭されたエピソード。「人は世代を超えたつながりのなかで、社会とともに生きている」という教えとされますが、この話を紹介する時のハリス氏の楽し気な表情などが、若者たちの心をつかんでいるといいます。

その母親は、インド出身で「がん」の研究者。父親はジャマイカ出身で経済学者。ハリス氏は移民2世としてカリフォルニア州で生まれ、両親の離婚後、母親に育てられました。

母親が、肌の色や訛りのある英語によって差別を受けるのを目の当たりにして育ち、黒人差別の撤廃を求める公民権運動にも幼い時から連れられて行っていたからでしょうか、ぐずった時に「何がほしいの?」と母親が聞くと「フリーダム=自由」と答えることもあったそうです。

卓越したキャリア

政治の世界に入る前は、検察官としてキャリアをスタートしたハリス氏。黒人女性としては初めて、州の司法長官にまで昇りつめます。

その当時、大きなうねりとなっていったのが、黒人が白人警官の暴行によって死亡した事件などに抗議する「ブラック・ライブズ・マター」運動。ハリス氏はカリフォルニア州の司法長官として、警察官の暴力を抑止するため、全米で初めて警察官にボディカメラの装着を義務付けました。

こうした成果が注目され、2016年、上院議員に当選。2020年には民主党の大統領候補に名乗りを上げ、バイデン政権で副大統領に指名されたのです。黒人・女性・アジア系のいずれにおいても、初めての副大統領でした。