事件現場は警備を大幅強化 それでも消えない不安の原因
先週、改めて事件現場のバス停を訪れた。蘇州市は警備の強化を日本側に約束したというが、実際バス停には数人の私服警官とみられる男性数人がいて(サムネ写真)、夕方になっても警戒に当たっていたほか、警察車両も定期的に周辺をパトロールしているのが確認できた。バスには案内係に加え、警備員も同乗するようになったという。日本人学校に子どもを通わせる保護者は「事件のことはあまり考えたくない」としながら「今の警備はしっかりしてもらえているから、今後のことに目を向けたい」と言葉少なに話してくれた。別の保護者からも警備の強化に安心したという声が聞かれたが「いつまでこの警備態勢が続くのか、保護者の間で度々話題になります。数か月なのか、1年なのか…」と先行きを案じている様子だった。この保護者は今でも一人ではバス停の前を歩くことができないという。
一方、強い不信感を抱く保護者もいる。情報が極端に制限されていることがその原因とみられ「偶発的な事件」「日本人を狙ったものではない」という蘇州市の説明について「私のまわりはみんなそうは思っていません」とキッパリと話した。さらに「毎日バス停の前の道が塞がるほど日本人で溢れているんです。絶対狙っていましたよ」と、今も不安が払しょくされない様子だった。
私が暮らす上海市でも、日本人学校周辺の警備が強化された。送迎バスの車内には防刃ベストや催涙スプレーなどを備えたという。蘇州市、上海市の対応からは「これ以上日本人の被害を出してはいけない」という本気度は感じられた。また事件に関するデマや、過度のレイシズムを煽る投稿についても、中国の複数のIT大手は規制に乗り出すとしている。だが前述のとおり、中国側からこの1か月、事件について追加の情報は何もないという。不安を払しょくするために必要なのは、警備の強化だけではないはずだ。日本人学校に子どもを通わせている保護者として、そう感じずにはいられない。(JNN上海支局 寺島宗樹)