11月に控えたアメリカ大統領選挙。トランプ前大統領が選挙集会で銃撃される波乱の展開になっています。SNS上には“陰謀論”や“偽情報”が溢れる事態に。深まる分断・・・選挙戦の行方はどうなるのでしょうか。
右派からも左派からも 「銃撃」めぐる陰謀論とフェイクニュース
トランプ前大統領が銃撃された暗殺未遂事件の波紋が広がっている。
懸念されているのは、行きかうSNS上の投稿が大統領選挙に及ぼす影響についてだ。フェイクニュースなどをチェックする調査会社の編集者ジャックさんは「これまでなかった事態が起きている」と話す。

NeWs Guard 編集者 ジャック ブリュースター氏
「銃撃事件はアメリカの歴史上、本当に大きな転機となるもので“陰謀論”を拡散させるユーザーが飛躍的に増えました」
歴史的な出来事や事件の背後に、何者かの計画があるとする陰謀論。これまで、拡散に熱心だったのは…
ジャック ブリュースター氏
「これまでの銃撃事件では例えば『サンディフック事件』の場合でも、陰謀論は右派によって拡散されました」
2012年、コネティカット州の小学校で男が銃を乱射し、児童ら26人が死亡したサンディフック事件。

ラジオ番組の司会者が「事件は実際には存在していない」「銃規制強化を狙った政府の“やらせ”だ」と発信し、右派によって陰謀論が広まったという。
しかし、今回の銃撃事件については、右派だけでなく、左派からも“陰謀論”が拡散されている異常な事態だという。
こちらはバイデン支持者とみられるSNSの投稿。

「事件はトランプによる自作自演だ」という内容の閲覧数は470万回。
「あれは銃の傷ではない。彼は血液のカプセルで偽装した」という投稿もあった。
調査会社によると、X上で「でっちあげ(Staged)」というフレーズが30万回以上使われ、トレンドに入ったという。
一方、トランプ支持者とみられる投稿も。
「シークレットサービスが犯人を見逃すはずがない」「事件はバイデン大統領が銃撃を命令した内部犯行だ」とする投稿の閲覧数は740万回を超えた。

ジャック ブリュースター氏
「銃撃事件の陰謀論が左派から出てくるのは新しい現象です」「誰もが記者として発信でき、偽情報でもおかまいなしに拡散させます。もし陰謀論を信じていれば、“自分が偽情報を広げている”と自覚さえしていない場合もあります」
他にもトランプ氏が黒人女性に囲まれるこの「フェイク画像」。

トランプ支持者が、黒人からの支持拡大を狙って、生成AIで作成したものだ。
有権者に投票をしないよう促すバイデン氏の「フェイク音声」も出回った。

バイデン氏のフェイク音声
「投票は(本選の)11月にしてこそ影響を与えられる。今週火曜日ではない」
蔓延する陰謀論によって、さらに分断が深まることをジャックさんは危惧している。
ジャック ブリュースター氏
「たいていの人は投票する前に、気候変動や移民問題について、じっくり考え決断しているわけではありません。政治を左右するのは浮動票です。そうした人々がどちらかの陰謀論を信じれば、考え方や投票行動に大きく影響するかもしれません」
「これから(偽情報を作る)AIが選挙をどう変えるのか…私たちが『何が現実で、何が現実ではないのか』よく分からなくなっていることに恐怖をおぼえます」