福島第一原発の処理水放出に理解の声 日本とフィジーは「戦略的パートナー」

「太平洋・島サミット」の期間中、岸田総理が島国のトップらとの会談で必ず行ったのが、東京電力・福島第一原発の処理水放出に関する説明だ。総理が「今後も安心を高めていく」と伝えると各国はそろって歓迎の意を示した。
しかし放出が発表された2021年当時、島しょ国からは強い反発の声があがった。理由の一つに、この地域でかつてアメリカやイギリス、フランスといった大国が核実験を繰り返し、住民が被ばくしたという悲劇の歴史がある。
フィジーでも当初、処理水の放出に大臣が懸念を表明し、国内では反対デモが起こった。しかしその後、IAEA=国際原子力機関が科学的な根拠に基づき安全性を確認したと発表すると一転して支持を表明。その後、中国が「核汚染水」などと不安を煽る発言を繰り返す中でも、日本の方針に理解を示す立場を貫いてきた。
サミットを終え、他の島しょ国の不安も払しょくされたと思うかランブカ首相に尋ねると、「そのはずだ。我々は(日本で)毎日刺身を食べていたしね」と冗談交じりで答えた。
「信頼関係を固め直すこと」が一つのテーマとなっていた今回のサミット。岸田総理は閉幕後の共同記者発表で「日本と島しょ国地域の関係を更なる高みに引き上げ、未来に向けて共に歩む決意と具体的な道のりを示すことができた」と強調した。
インタビューの最後、日本とフィジーは戦略的パートナーシップ関係にあると思うか尋ねると、ランブカ首相は「イエス」と答えた。
「私たちは同じ思いを持ち、同じ一つの地域にあります。日本に影響を与えるものは私たちに影響を与えるし、逆もまた然りです。私は『平和な太平洋』を訴えてきましたが、日本と一緒なら出来ると思います」
目まぐるしく移り変わる国際情勢の中、日本は島しょ国と時間をかけて積み重ねてきた信頼を失うことがないように、これまで以上に丁寧な対話と連携が求められている。
政治部外務省担当
大﨑雅基