千年続く巨大段々畑

バレアレス諸島のひとつマヨルカ島

このようにさまざまな民族や国の栄枯盛衰の舞台となった地中海ですが、バレアレス諸島の三番目の島・マヨルカにもそんな興亡が生んだ世界遺産があります。それが「トラムンタナ山脈の文化的景観」。

マヨルカ島の世界遺産「トラムンタナ山脈の文化的景観」

マヨルカ島の北部にトラムンタナという山脈が走っているのですが、そこに1000年かけて作られた広大なオリーブの段々畑や果樹園などがあります。

1000年かけて作られた段々畑の景観

元々はイスラム教徒が山の斜面を削って作り始めたもので、13世紀にキリスト教徒がマヨルカ島を征服・支配するようになっても段々畑は作られ続け、今も使われているのです。

段々畑は13世紀にマヨルカ島を征服したキリスト教徒に引き継がれた

番組でも取材したのですが、キリスト勢力に敗れて山奥に逃げ込んだイスラム教徒の人骨なども撮影することが出来ました。山脈の湖で発掘されたもので、住居やモスクの跡も見つかっています。

湖近くで見つかったイスラム教徒の人骨

先史時代の謎の巨石文化、古代ローマに滅ぼされた海の民、そしてイスラム教徒からキリスト教徒へと受け継がれた段々畑・・・スペイン、バレアレス諸島の3つの世界遺産は地中海を舞台にした文化・文明の歴史を物語っているのです。

執筆者:TBSテレビ「世界遺産」プロデューサー 堤 慶太