物流業界では、2024年問題などでドライバー不足が大きな問題となっている。こうした中、トラックの完全自動運転技術を開発し、新たな物流サービスの提供を目指すベンチャー企業が注目されている。

トラック自動運転最前線 実証実験の現状は?

新東名高速道路を走る大型トラック。運転席にドライバーが乗っているが、走行は全て自動で行われている。この実証実験を行っているのは、三井物産とAIの開発などを手がけるプリファード・ネットワークスの共同出資で設立された、ベンチャー企業の「T2」だ。T2は、既存の大型トラックにカメラやライダーと呼ばれるセンサーの他、GPSなどを使った自動運転のシステムを開発している。

T2は、設立からわずか2年。社員の数は設立時の5人から現在は80人に増加。自動車メーカーや物流会社、ソフトウェア開発など、様々な業界から集まっている。T2エンジニアの宮澤克規(40歳)さんは元ホンダ。「(車の)レジェンドに搭載されている自動運転レベル3(条件付自動運転車)の開発をしていた。自分が持っている自動運転の技術を使って日本を良くしていきたい」と語る。同じくエンジニアの藤巻由太(41歳)さんは元いすゞ中央研研究所。「物流の問題で新しい物流を作るしかないと思っていて、そこを一刻も早く実現できるのはこの会社だと思った」。

6月21日に行われた実証実験。トラックは取り付けられたカメラやセンサーなどにより、自動で車間距離を把握し、アクセルやブレーキを制御。合流地点やトンネル内でもスムーズな走行を実現している。実験に参加したT2技術開発本部 V&Vteamエンジニアの三浦靖弘さんは「例えば、急ブレーキがかかったときに荷物の荷崩れといった部分も気にしないといけないので、乗用車よりもかなり気を使って制御していく必要がある」。

この実証実験では、新東名高速道路の浜松サービスエリアから駿河湾沼津サービスエリアまで過去最長となる116kmを全て自動運転で走行することに成功した。今後は走行区間をさらに拡大させるため、システムの安定性や走行能力を高める必要があるという。

T2技術開発本部の辻勇気本部長は「一番課題になるのは、車両に異常が発生したときに、安全に路肩退避をしたり、交通インフラも含めて乱さないようにしたりすること。あらゆる事象に対して対応できるようになっていく必要があるので、走行の安定性と機能を徐々に向上していきたい」という。

そしてT2は、開発した自動運転のシステムを他社に販売するのではなく、自社でトラックを保有し、輸送サービスまで担おうとしている。

T2 森本成城CEO:
技術を開発していくのは一つ大きなところだが、運送会社としてしっかりとオペレーションも作っていく。