痛ましい事故のニュースからお伝えします。5日金曜日、高知県高知市の小学4年生が水泳の授業中にプールで溺れて死亡しました。設備の故障に伴い、水深が深い中学校のプールを使用していた際に起きた事故でした。原因の詳しい調査は今後進められますが、高知市は全ての市立学校に2024年度の水泳の中止を依頼。いま、水泳の授業のあり方が問われています。

事故が起きたのは高知市の南海中学校のプールです。

高知市教育委員会によりますと7月5日の金曜日、ろ過ポンプの故障のため、中学校のプールを借りて行われていた、長浜小学校の水泳の授業中、小学4年生の男子児童が溺れました。

男子児童は別の児童に発見され、プールサイドに引き上げられました。人工呼吸などが行われ、男子児童は意識がない状態で、病院に搬送。その後、死亡しました。

この日、プールでは、2つのグループに分かれて授業が行われていました。男子児童は泳ぎが苦手なグループで、プールサイドにつかまって、バタ足の練習をしていたということです。

男子児童がみつかったのは、水深130センチほどある、プールサイド付近。中学校のプールは小学校のプールより、場所によっては10センチ以上深いところがありました。
(高知市教育委員会 松下整 教育長)
「長浜小学校のプールが使用できないと分かった時に、学校と何度もやりとりをした。今となってはだが、他の方法を取ることができなかったのか、悔やむばかり。最終的に決定したのは教育委員会なので、責任は教育委員会にあると思っている」

プールには、教頭と、担任の教諭2人の合わせて3人がいました。男子児童を含む10人を、教諭1人が、プールの中で指導していたといいますが、溺れたことには気づかなかったといいます。
(高知市教育委員会 松下整 教育長)
「結果として教師が見つけることができなかったという、あってはならないことが起こっているので、なぜそんなことが起きたのか、検証していく」
中学校のプールを使った授業は2024年度、3回目でした。教育委員会によると、亡くなった男子児童は泳ぎが苦手なため、これまでの2回の授業で担任に抱きかかえられる場面もあったといいます。児童の泳力について、学校は把握していたということです。

長浜小学校の体育館では保護者会が開かれ、学校から、経緯などが報告される予定でした。しかし、学校は、保護者会についての連絡を遺族以外の保護者にしか送っておらず、それを知った遺族が「経緯の説明ができていない中で保護者会を開くのは筋が違う」と訴えたことから、学校は急きょ、保護者会を延期に。

(長浜小学校 中村仁也 校長)
「今回の起こった取り返しのつかない事故、ご遺族の方としっかりと経過や謝罪の話ができていないままに保護者会を開くことは順番が違う。今回の保護者会を中止させていただいた」

子どもが、亡くなった男子児童と同じクラスだったという保護者は、涙を浮かべながら取材に応じました。
(同じクラスの保護者)
「まさかそんなことが起きると思っていないので…いくら説明を聞いても“どうして”という言葉しか出てこない」
(同じクラスの保護者)
「サッカーが好きで小柄だった。活発で明るい子、ハキハキしていた」
また、この保護者の子どもも、中学校での水泳の授業で溺れかけたことがあったといいます。
(同じクラスの保護者)
「深いところでビート板がはずれてしまって、おぼれかけて、その時は友だちが助けてくれたって言って。校長先生とか教頭先生、担任の先生にその話はいっていますかって言ったら、特にきてないですっていう事だったので」

教育委員会は7日、今後の水泳授業のあり方などを協議しようと臨時の校長会を開催。市立の小中学校などの校長が集まり、黙とうを捧げました。
教育委員会は各校長に2024年度の水泳授業の中止を依頼。「この会で理解は得られた」といい、各学校が、2024年度の水泳の授業を中止しています。

(高知市教育委員会 松下整 教育長)
「授業の中で、学校の管理下の中で、尊い命が失われたことを互いに共有するとともに、校長と私たち教育委員会との間で意思統一をさせていただいた。二度とこのようなことがないように、しっかりとやっていきたいと思う」

教育委員会は今後、第三者による検証を行い、これからのプールのあり方などを検討していくことにしています。

この事故について県教育委員会は、各市町村の教育委員会に、プール全体を見渡せる監視者の配置や、泳ぎの苦手な児童に対する安全確認などの徹底を呼びかけました。また、長浜小学校にはスクールカウンセラーを派遣して、子どもたちの心のケアにあたるということです。
教諭の中には「水泳の授業は命がけだ」と話す人もいます。当然、どこの教育現場でも、事故が起きないために最善の注意を払っているはずですが、今回、幼い命が失われてしまったのは事実です。同じ悲劇を二度と繰り返さないために第三者機関によるしっかりとした調査が求められます。亡くなった児童のご冥福を心からお祈りします。














