4. 人工心肺の確立が素早くできている。

心臓外科医にとって人工心肺という心臓と肺の代わりをする器械を取り付ける(確立する)ことは基本中の基本手技なのですが、なかなかすぐにできるようなものではありません。

高階先生が人工弁を回収デバイスで回収するときに左室心筋に引っ掛け左室から出血してしまいました(左室破裂)。「人工心肺を開始する」と指示して急いで人工心肺を確立します。

人工心肺は送血管と脱血管という管(ボールペンくらいの太さの管)をそれぞれ動脈と静脈に入れて脱血管から静脈血を脱血し、人工肺で酸素加(酸素を加える)し、ポンプで送血管から動脈に血液を送ります。それにより酸素加された血液(酸素を含んだ血液)が全身に回るのです。

心臓の手術で心臓を止めないといけないときや、心臓や肺の機能が弱ったときに使用することで、生命を維持することができます。この場合、左心室から出血して、心臓が十分に血液を全身に送れない手助けに人工心肺を取り付けたのです。

この時の世良先生の動きは実に無駄がなく、柿谷先生が「世良、静脈からコネクト!」と指示し、世良先生は脱血管を人工心肺とコネクト(つなげる)します。研修医ならほとんど手も足も出ないところですが、全く物おじせずに手技を続けています。なかなか人工心肺をスムーズに取り付けることができる研修医はいません。おそらく全国で一番できる研修医であると思われます。

ちなみにこの前に器械出しの猫田さんが「人工心肺いつでも回せるようにしておいて」とME(medical engineer:臨床工学技士)に指示しますが、この指示を出せる看護師はほとんどいないというか医者以上です。1話における「美和ちゃん、クーリー拘用意しておいて」に続く神がかった指示です。