上皇さまがきょう(23日)、92歳の誕生日を迎えられました。今年は2度の入院をしながらも先の大戦と向き合ったほか、ライフワークのハゼ研究も続けられました。

■この1年の体調

上皇さまは、5月に無症候性心筋虚血(心臓の筋肉への血流が不十分になる状態)の疑いで、東大病院に5日間入院されました。その後も症状が改善しないことから、7月に投薬治療のため再び入院。検査では脈が速くなる「上室性不整脈」の症状も確認されました。

上皇さまの入院は、在位中の2012年に冠動脈バイパス手術をして以来、13年ぶりでした。

現在は、服薬や水分摂取制限を続け、筋力維持のために御所内の散策や階段の昇り降りを続けられています。

側近は現在の体調について「比較的安定した状態で維持されています」としています。

■美智子さまとお出かけも

たびたび上皇后さまと外出もされました。2月に葛西臨海公園でスイセンの花を観賞したほか、4月には「学習院ミュージアム」をご覧に。心臓治療から退院後の8月には、恒例の静養先、長野・軽井沢町へ。大日向のキャベツ畑を手を繋いで散策されました。

9月には、悠仁さまの成年式後のお祝い行事に出席し、孫の成長を微笑ましく見届けられたといいます。

10月には、神奈川・葉山御用邸で今年2度目の静養。過去に上皇后さまと何度も散策した思い出の岬「小磯の鼻」で、地元住民らと15分間笑顔で交流されました。その際、おふたりで手を繋いで歩き、住民らの犬に触れながら笑顔で話しかけられていました。

■「戦後80年」思い馳せ

節目の今年は、天皇皇后両陛下の「慰霊の旅」を静かに見守られました。

お住まいでは、「戦後50年」を前に硫黄島を訪ねた時のことを上皇后さまと懐かしく話される場面もあったといいます。

御所では戦争についての特集番組を見たほか、過去に訪問した資料館から届いた会報「知られざるモンゴル抑留者の悲劇」を読まれたということです。

側近によると、「疎開時代の思い出や、フィリピン訪問時(2016年)に面会した残留2世の人を思い起こすなど、たびたび先の大戦と向き合われた」としています。

そして、皇太子時代に「忘れてはならない4つの日」としてあげた「沖縄慰霊の日」「広島原爆の日」「長崎原爆の日」「終戦の日」には、今年も欠かさず上皇后さまと共に黙とうを捧げられました。

■ハゼ研究の詳細も明らかに

魚類学者でもある上皇さまが60年以上取り組むハゼの研究について、側近が詳細を明らかにしました。

上皇さまは、毎週月・金曜日は皇居の生物学研究所で、水曜日は仙洞御所で研究を続けられています。直近では12月12日に研究所を訪問し、車の窓を開けて沿道の人に会釈される姿もみられました。

側近によると、現在はハゼの生態や分類について改めて検証されているということです。

具体的には、潮の満ち引きなどで川の塩分濃度が変化することでハゼの生態がどう変わるか調べるほか、ハゼを分類する特徴などについて熱心に研究を続けられています。

また、上皇さまは1980年に共著者と「日本産クモハゼ属6種」について発表しましたが、その後、新たに見つかった5種についても、それぞれの成魚・幼魚について研究を進められているということです。

さらに、ご自身のテーマを深めるだけでなく、毎月行われるオンラインの研究会にも熱心に参加し、横で一緒に聞いている生物学研究所のスタッフに質問を重ねられることもあるといいます。

上皇さまはこの1年、心臓の病を乗り越えながら、ライフワークの研究活動に励み、国民の幸せと平和を願われました。