太平洋のソロモン諸島が今年4月、中国との間で警察や軍人の派遣を要請できる安全保障協定を結んだと伝えられたことで、世界には衝撃が走り、米中間の緊張が高まった。事態の背景には、中国による資金援助がある。国際社会が警戒を強める中、中国マネーは世界にどのような影響を及ぼしているのか。また、これまでに中国が融資を行ってきた地域をみることで浮かび上がってくる“債務の罠”とは?

■ソロモン諸島をめぐり強まる米中緊張


ソロモン諸島は2019年、36年間続けてきた台湾との外交関係を断絶し中国と国交を樹立した。南太平洋島嶼国の外交関係を見ると、台湾と国交を結んでいる国が少なくなり、中国と国交を結ぶ国が増えているという状況にある。


ロイターなどの報道によると、ソロモン諸島が今年4月に中国と結んだ安全保障協定は、
①ソロモンは中国に警察・軍人の派遣を要請できる
②中国はソロモンで船舶の寄港や補給ができる
③中国は中国人の安全や主要な事業を守るためソロモンで中国の部隊を使用できる
などとなっており、世界に波紋が広がった。


オーストラリア アルバニージー首相
「私たちはオーストラリアに近いソロモン諸島に(中国軍が)常駐することを懸念しており、それがこの地域の利益になるとは思っていない。非常に慎重に議論を行うつもりであり、私たちは太平洋の国々の主権を尊重している」


7月13日、フィジーの首都スバで行われた国際会議には、オンラインでアメリカのハリス副大統領が出席。太平洋島嶼国地域への支援の増額や、1993年に閉鎖したキリバスとトンガの大使館を開設すると表明した。


8月8日には日本の海上自衛隊がソロモン諸島の海上警察と初めて共同訓練を実施。アメリカ海軍の艦艇も参加しており、中国をけん制する狙いもあるとみられる。ソロモン諸島を舞台にした安全保障をめぐる中国とアメリカの緊張状態は深刻さを増している。