エヌビディア一強 どこまで続く?

――本当にエヌビディアは一強であり続けるのか?

ニッセイ基礎研究所 井出真吾氏:
エヌビディアにもリスクは大きく2つあると思っている。まず1つはライバルが出てくること。今、エヌビディアはGPU市場で独占状態。その結果、単価がものすごく高い。エヌビディアの営業利益率は50数%ある。1個売り上げたら、そのうち50数%が利益になるわけだから、相当単価が高い。そのぐらい殿様商売ができている。ということは、同じようなものを供給するライバル会社が出てきた瞬間に、単価が急に下がるリスクがある。ただ、エヌビディアの場合上手なのが、物を作って売るだけではなく、顧客と一緒にソフトウェア開発もやっている。データセンターと一口にいってもそのデータセンターによって取り組んでることが違う。システムの構成も違う。データセンターの先にいるクライアントも当然違うので、データセンターごとに違うソフトウェアが必要。ソフトウェアも一緒になって開発している。お客さんの課題解決を一緒にやっているので、エヌビディアの顧客にとっては、もう完全に業務に組み込んでいる。ライバルが出てきたからといって簡単に置き換えるわけにいかない。

――かゆいところまで手が届くということか?「だったらエヌビディアにお願いしよう」と。一度そのデータセンターを作ってしまえば、以降新しいものに変えるときも、エヌビディアのソフトウェアで出来上がっているから、エヌビディアの商品で置き換わっていくと。

ニッセイ基礎研究所 井出真吾氏:
よほど安いものが出てきたら変えようかなというユーザーも出てくるかもしれないが、今のところまだそういう状況にはない。ただもう1つのリスクとして、「GPUを必要としないAIの技術」が開発されつつあるらしい。

――それが実現されたら、厳しくなりそうだ。

ニッセイ基礎研究所 井出真吾氏:
GPUがいらないAI技術が確立されるという話になった瞬間に、エヌビディアは死ぬかもしれない。先ほども株価はまだ乱高下すると思うと言ったが、株価が上がったとき下がったとき、その背景に何があるんだと。単に人気だから、みんなが買って上がっているのか、実力を伴って上がってるのか、大きく下がることがあったとしたら、それはライバルが出てきたのか、そもそもGPUはもういらないという話になってきたのか、その背景をきちんとチェックしてから判断をしてほしいと思う。

――続いては、関連する分野を見ていく。

ニッセイ基礎研究所 井出真吾氏:
GPUに限らずAI半導体のブーム・需要拡大はまだまだ続くと思うが、やはりデータセンター関連の株は好調。データセンターに特化した不動産投資信託(REIT)も出てきている。データセンターは大量の電気を使うので発熱もすごいので冷却装置とかも一応、半導体関連で位置づけられる。実際、アメリカの冷却装置企業でも8割ぐらい株価上がっているところがある。

――しっかりと関連分野も上がってきていると。

ニッセイ基礎研究所 井出真吾氏:
エネルギー関連も、効率的にエネルギーを発電して供給する企業もある。あと注目は、半導体の部材。特にウエハーは半導体の基本材料だが、今主流はシリコンウエハー。そして次の新しいものが「シリコンカーバイド」。炭化ケイ素を使ったウエハーが出始めている。これは消費電力半分で済むので、中国も電力規制しているし、日本でも電力不足で、データセンターを全部作れるのかという疑問もあるが、消費電力が半分で済むとなるといずれ需要はシリコンカーバイドの方に移っていく。移り始めている。ただ生産コストの面でそこまで優位ではないので、一気に移るという事はないが、じきに移るのではないかと思う。半導体関連といっても色んな切り口があるので、幅広く投資しておくことで半導体の中でもリスク分散ができる。

まだ間に合う? AI・半導体ブーム

――では、改めてAI・半導体ブームに乗るには?

ニッセイ基礎研究所 井出真吾氏:
難しく考えなくていい。まだまだ需要は拡大する。ただ株価は乱高下する。アメリカの利下げ開始がもっと後ずれになるとか景気が腰折れするとかいろんなリスクがあるが、半導体の需要そのものが縮小するとは考えにくい。株価は下がったところで、少し買う、また下がったところを少し買うとか、難しく考えずに長期的には上がる、と投資していってもよいと思う。ただアメリカの半導体産業がここ数年すごく強いのは、政府の補助金のおかげでもある。株価が上がった、下がった、その理由を確認して欲しい。そもそも需要やライバルの存在、政府の補助金。バイデン政権が出している大規模な補助金制度が仮に2025年以降、次の大統領下で補助金の打ち切りや縮小という話になったら、当然厳しくなる。そういうところをよくチェックしてもらうといい。

――株価が下がった理由をしっかりと見極めて投資に生かしていくということが大事か。

――最後に投資のプロの井出さんから相場の格言です。「上がった相場は自らの重みで落ちる」。これはどういう意味でしょう。

ニッセイ基礎研究所 井出真吾氏:
バブルみたいなことをイメージしている格言。上げ相場は実力を伴った上げ相場だったらいいが、そうでなければ、行き過ぎた相場は一旦実力水準まで下がるということだと思う。今のアメリカの半導体・AI関連株は、若干高過ぎるし期待が高まり過ぎているので、多少10%ぐらいの調整余地はあると思う。だから日本の半導体関連も少し買われすぎていたので、ここのところ調子悪い。そういうことを言ってるだけの話。

――リスク分散する上では、先ほど紹介してもらった投資信託に十分含まれているので、そういうところからトライしていくのもよいか?

ニッセイ基礎研究所 井出真吾氏:
例えば「ナスダック100」は半導体以外のハイテク企業もたくさん入っているし、S&P500だったら、ハイテク以外の伝統的な産業も入っているので、リスク分散をするのもありだと思う。