広島県とロシアが直近の3回でやりとりした文書の全文は、以下の通りです。

【2024年4月11日付 湯崎知事のプーチン大統領宛て要請文】
貴国がノバヤゼムリヤ島での核実験の準備を進めている可能性が高いとの報道に接しました。
貴国が2022年2月24日にウクライナへの軍事侵攻を開始して以降、幾度も核兵器使用を示唆する発言をしていることに対して、私は強く非難し続けてきました。
貴国の一連の核恫喝によって、いくつかの国において、自国の安全保障上の懸念から、核抑止への依存を強めようとする動きがあることに、私は強い危機感を覚えています。
この非常に厳しい状況において、さらに貴国が核実験を行った場合、他の核兵器保有国に新たな核兵器開発の口実を与え、長年にわたって国際社会が積み上げてきた核軍縮の取組を大きく後退させることにつながりかねず、極めて遺憾です。
ここに、人類最初の原子爆弾による未曾有の惨禍を経験した広島県民を代表して、決して核実験を実施しないことを強く要請します。

【2024年4月付 ニコライ大使の湯崎知事宛て返書(5月16日に広島県が受領)】
過去の悲惨な経験にもかかわらず、現在の日本は軍備管理の分野で指導的な役割を果たす立場にはありません。“核兵器のない世界” を築くという崇高な目標を宣言しながら、東京(日本政府)は二国間同盟の枠組みの中でワシントン(米国政府)が提供する “核の傘” への依存を捨てようとしていません。
プロパガンダ的な虚偽を広め、ロシアを核兵器による脅威とそれに対応するリスクを生み出す国家として見せかけようとする一方で、貴職は書簡の中で、1945年の広島と長崎への原爆投下の責任国である米国について言及する勇気をまたも見つけることができませんでした。貴職はまた、米国がCTBTの批准を拒否し、NATOの中で “核のミッション” を組織することによって、事実上NPT体制を弱体化させているという事実から目を背けています。
あなたの国は、“拡大抑止戦略” のフレームワークにおける米国や韓国との協力の拡大など、米国の危険なゲームを積極的に支援しており、そのことは、とりわけ、地域(東アジア)における米国の核戦力の増強につながっています。いわゆる “非核三原則” の最終的な見直しや、NATOの “核のミッション” のような核兵器使用に関する米国との軍事演習への参加の可能性について、日本政界の有力議員たちによって始められた議論にも、日本の相反する路線のもう一つの兆候が見られます。
広島県当局が、明白で議論の余地のない事実をあえてそのようにはっきりと述べるまでは、当大使館はこのような訴えを、注目に値するものとは考えません。それゆえに、また、貴職の書簡は、一般的に受け入れられている書簡のルールの多くを無視するものでもあることから、受け取ることはできません。

【2024年6月21日付 湯崎知事のプーチン大統領宛て要請文】
本県が4月11日付で、貴国大使に対して貴職への送付を依頼したノバヤゼムリヤ島における臨界前核実験中止要請文について、貴国駐日大使に受理していただけず、貴職に対して本県の意向をお伝えできていないと考えることから、本書にて改めて本県の意向をお伝えします。
先の核実験中止要請は、貴国がウクライナへの侵略と、その中で幾度も核恫喝を行っているなどの一連の行動及び言動を受けて実施しました。
今回は、ノバヤゼムリヤ島で核実験の兆候が見られるとの報道に接しましたが、本来、貴国は核兵器開発に関する透明性が担保されるよう、率先して情報公開をすべきであると考えます。
その上で、本県としては、引き続き貴国の核実験等の動きが明らかになれば、速やかに抗議等の対応を行います。
加えて、本県は、どの国に対しても、核実験の兆候あるいは実施の事実が明らかになれば、中止要請あるいは抗議を厳正に実施しています。直近では、米国政府の臨界前核実験の実施計画が明らかになったことを受けて、5月14日付で米国政府に対して中止を要請し、その後臨界前核実験が実施されたことから、5月18日付けで米国政府に対して厳重に抗議しました。
また、日本政府に対しては、非核三原則の堅持や核兵器禁止条約への署名・批准をはじめ、核兵器廃絶に向けたリーダーシップを発揮するように強く要請を行っています。
米国とともに最大の核保有国である貴国も、NPT第6条にあるとおり、真摯に核軍縮に向き合い、責任ある対応を実行すべきことは言うまでもありません。
ここに改めて、臨界前核実験を含む一切の核実験を決して実施しないことを要請します。