今年の夏、全国のバレエ教室で開かれたワークショップ。講師はロシア人とウクライナ人。「なんでこの時期にロシア人を」と反対の声もあがりました。2人を招いた日本人ダンサーの思い。そして、子どもたちが感じたこととは。

■バレエの絆と戦争 ロシア・ウクライナの講師が来日


7月30日、宮崎市内のバレエ教室「倫バレエスタジオ」で、特別なレッスンが行われていました。

タチアナさんの通訳をする近藤雅代さん
「グランプリエの時は、ずっと背中を保ったまま、上にひっぱられるようにみたいな感じで」

教えているのは、7月に来日した、ロシア人のタチアナさん。ロシアの名門、マリインスキー劇場でソリストを務め、世界各国でバレエの芸術監督としても活躍しています。今回、日本各地のバレエ教室で開かれたワークショップの講師として招かれました。

国山ハセンキャスター
「どことなく緊張感がありますね。みなさん本当に真剣な表情でレッスンを受けています」

タチアナさんと同じくワークショップの講師として来日した人が、もう一人。
ウクライナ・オデーサ出身のエリザベータさん(29)ロシアのバレエ団に所属するバレエダンサーです。


彼女がこの日担当したのは、4歳から7歳の子どもたち。子どもたちもやや緊張気味。

女の子「ママがいい…」

エリザベータさんの通訳をする近藤雅代さん
「ちょっと踊ろうね。みんなで踊ってたらすぐママ迎えに来るから。そしたらママのところに行こうね」

バレエ教室の先生
「ママに会いたい。(いつもの先生と)雰囲気が違ったからかな。結構人見知りなんですよ」

さりげなく子どもたちに寄り添いながら、指導を続けるエリザベータさん。


ロシアバレエ団に所属 近藤雅代さん(28)
「じゃあ横の子と手を繋いで~!」

ハセンキャスター
「もうみんな緊張も解けて。楽しそうにレッスン受けています」

ロシア人とウクライナ人、二人の講師を招いたのはロシアのバレエ団に所属するバレエダンサー、近藤雅代さんです。

2022年4月まで行われたバレエ団のアメリカツアーではタチアナさん、エリザベータさんとともに舞台を作り上げてきました。本場ロシアのバレエを子どもたちに伝えたい、その思いで、去年からバレエのワークショップを開催。しかし今年は、反対の声が上がったといいます


■「ふざけるな」ロシア講師の来日に反対の声も


ーー具体的には、どんな声が聞かれた?

ロシアバレエ団に所属 近藤雅代さん(28)
「具体的に言えば、なんでこの時期にロシア人を、という意見ですね」

2022年2月に始まったロシアによるウクライナ侵攻。

ロシアバレエ団に所属 近藤雅代さん(28)
「(ワークショップ開催を)決めた時が、それこそ戦争が始まってすぐだったので。みんなに言ったら、なんか『ふざけるな』みたいなのはありました」

家族や友人も、ロシア人のタチアナさんを日本に呼ぶことに反対したといいます。

ロシアバレエ団に所属 近藤雅代さん(28)
「もちろんわかってたんですよ、みんなも私のことが心配だからそうやって言っているのもわかっていた。でも…すごく正直に言うと、どうしてその情勢と個々を別々に考えられないのか、理解ができなくて・・・」


近藤さんが所属するバレエ団にはロシア人はもちろん、ウクライナ人もベラルーシ人も在籍しています。それでも国籍に関係なく、全員が「1つの作品をみんなで作り上げる」、その思いで舞台に立っているといいます。

舞台に掲げられたスローガンは「DANCE FOR PEACE」

反対の声もあったワークショップ。
参加した生徒たちは―

ハセンキャスター
「ロシアの先生が来ることに反発する声もあった?」

ワークショップの生徒
「私は反発するとかはなくて、逆にロシアの本場のバレエを見ることができてとても嬉しい」

ワークショップの生徒
「ロシアだからとか、国それぞれの今の状況とは、関係ないんじゃないかな。政治と国と人と芸術とかをごちゃまぜで考えちゃうのは、私はよくないと思う」