与党の神経戦が決着した。後半国会、最大の焦点となっている政治資金規正法の改正。自民党は公明党に大幅に譲歩する形で修正案をまとめた。
与党間の実務者協議が暗礁に乗り上げ、「自民党案には賛同できない」と異例の表明をした公明党。決着がついた5月31日、岸田総理と公明党の山口代表が交わした固い握手の裏側には一体何があったのか。

自公の隔たりが残ったまま与野党修正協議スタート

28日、派閥の裏金事件を受けた政治資金規正法の改正に向けて、①自民党②立憲民主党・国民民主党・有志の会③日本維新の会、それぞれが提出した法案をめぐる、与野党による修正協議が始まった。

公明党はパーティー券の購入者の公開基準を今の「20万円超」から「5万円超」に引き下げることなど4項目を要求した。

当時、自民党は「10万円超」への引き下げを主張しており、自公の間でも隔たりは残ったままで、両党による実務者の協議も暗礁に乗り上げていた。

「岸田さんは公明案をのむ」麻生氏茂木氏が“待った”

決着2日前の29日、公明党は対応を迫られていた。

自民党が提示した修正案への賛否をどう表明するかについてだ。修正案には、公明党の主張する「法律が施行してから3年後に見直す規定」が盛り込まれており、連立与党として賛成する方針だった。

ただ、“公明党が自民党案に賛成する方針”との情報が伝わり始めると、野党は「同じ穴のムジナ」だと、批判の矛先を自民党だけではなく公明党にも向け始めたことから、公明党内では危機感が広がった。

こうした事態を受け、公明党の執行部の1人である北側副代表が、パイプのある自民党の森山総務会長に接触し、自民党の腹を探り、公明党の要求をのんでもらおうとしたのだ。ある公明党関係者がこう振り返る。

「自民が公明案をのむ噂が流れていた。自民と公明の情報戦になっていた」

一方、この日の夜、岸田総理は麻生副総裁・茂木幹事長と3者で会合を開いた。自民党関係者によると、この時点で、岸田総理は公明党の協力を確実なものとするため、公明党の要求を受け入れる方針に傾いていたという。

「夕方の時点で岸田さんは、公明案をのむということを自民党内に根回ししようとしていた」

この意向を持った岸田総理に、「10万円じゃないと議員活動が続けられない」など党内の声と向き合ってきた麻生氏や茂木氏は「このタイミングで公明党に譲る必要は全くない」と“待った”をかけた。

3者が協議した結果、公明党の要求を受け入れることは一旦見送ることになった。