NY市場参加者に聞く 全面安の背景と見通し

アメリカ市場の受け止めについて、ニューヨークに拠点を置くヘッジファンド、ホリコ・キャピタル・マネジメントの堀古英司さんに話を伺った。

ーーエヌビディアの決算はケチのつけようがないぐらい良い決算だったが、ダウ平均は605ドル安と1年3か月ぶりの安値、下げ幅を記録した。これはなぜ?

ホリコ・キャピタル・マネジメント 堀古英司氏:
今週は二極化が顕著な1週間だった。
すなわち、これまで比較的エヌビディアのような半導体の株と、不動産とか住宅の株が連動していたが、ここにきて、エヌビディアのようなAI関連は比較的中長期的にいってもまだまだ有望だということが確認された。

一方で、住宅とか不動産などは、高金利が長期化している。この二極化が顕著に現れた1週間だった。

ーーそういう景気敏感株が中心のダウ平均の方は、やはり大きく下げてしまったという一方、ハイテク株中心のナスダック市場は、昨夜のニューヨーク市場で史上最高値更新となっている。これはやはり、AI、半導体への期待感が強いということなのか。

ホリコ・キャピタル・マネジメント 堀古英司氏:
そうですね。AIという技術は、かなりの初期の段階だと思っている。

巨大な設備投資が必要な分野なので、そうなるとやはりAIを引っ張る大手がどんどん勝っていくという特徴があるので、ナスダックの中でも比較的ウェイトの大きい上位のハイテク銘柄がこれからも引っ張っていく展開が続く可能性が高い。

ーーAIや半導体などが経済成長に及ぼす影響が飛躍的であるという見方が、株式市場の一部には強いということなんですか。

ホリコ・キャピタル・マネジメント 堀古英司氏:
AIという技術は、生産性を上げる、すなわち、インフレが比較的抑制された中で経済の成長が見込めるという過去、産業革命やインターネットの導入時にあったような、画期的な技術だと思うので、中長期的に見て、今、金利が高止まりしているがインフレ率は落ち着いていく。にも関わらず、経済の成長が比較的高いことが見込まれるという、非常に経済全体にとって良い影響がもたらされる技術だと思う。

ーーそういう期待感がある一方で、アメリカの株式市場では依然としてFRBが金利を上げるか下げるかに常に敏感になっているという状況が続いている。この神経質さが出ているのはなぜか。

ホリコ・キャピタル・マネジメント 堀古英司氏:
やはり2022年、インフレ率が上がって金利が上がったが、金利が上がると債券が売られて株も売られたという2年前のトラウマがある。

このように金利が上がると株が下がるというのは、過去の歴史を見るとイコールじゃない。
金利が上がる時は大体景気がいいので株にはプラスのはずだが、今のマーケットは2年前のトラウマに囚われて、金利が上がると株が上がらなくなると下がるかもしれないという恐怖感が、まだまだ市場に支配的だということ。

ーーそうすると、今年の秋にFRBが利下げをするかどうかというのが焦点になってくるが、その時期まではこういう雰囲気が続くというふうに見ていいのか?

ホリコ・キャピタル・マネジメント 堀古英司氏:
今ちょうど、2年前にインフレ率がピークを打ってから下がってきた。3%前半から2%になるまで相当時間がかかるフェーズになっている。
ここで足踏みするのは仕方がないが、市場が前のめりになって利下げを要求しても、なかなかそんなに簡単にいかない状況が数か月続くという見込み。

ただ、インフレはまたいずれ低下を始めると思うので、秋口や大統領選挙の後のタイミングとも相まって、また株価に良い影響を与えていくんじゃないかと考えている。

しばらくは銘柄をしっかり見極めることが大事という局面かもしれない。