人生のどん底から救い出してくれたおばあちゃんたち

デザイナーとしても活躍する、福岡県うきは市出身の大熊さん。20代のころ、人生のどん底を味わった。バイク事故で大けがをし、4年間の入院生活を余儀なくされた。「人生終わった…」落ち込む大熊さんを励ましてくれたのが、同じ病院に入院していたおばあちゃんたちだった。

「うきはの宝」社長 大熊充さん「ケガして入院しているボクに同情するわけでもなく積極的にボクに話しかけてきて・・・。もう一回自分の人生を生きようというところまでおばあちゃん方のおかげで戻ってこれた。単純に恩返ししたいという思いが強かったというのもあります」

総務省の統計によると、福岡県うきは市の高齢化率は全国平均の29.1%を大きく上回る35.6%。大熊さんの周りには生活に困窮したお年寄りたちがたくさんいた。退院後、大熊さんはお年寄りたちの助けになりたいと、買い物や通院のための送迎サービスをボランティアで始めた。道中、おばあちゃんたちと話すうちに、「年金だけじゃ生活が苦しい」「生きがいが無い」この2つが共通する悩みであることがわかった。

ボランティアで高齢者の送迎をしていた大熊さん

「うきはの宝」社長 大熊充さん「『年金にプラスできる収入』と『生きがいの創出』。この2つのテーマに絞ったら、もうおばあちゃんたちと一緒に働くしかないかなっていう結論になって」

こうして2019年に、75歳以上のおばあちゃんたちが働く会社「うきはの宝(株)」が誕生した。

取材する人もされる人もおばあちゃん「ばあちゃん新聞」

毎月発行される「おばあちゃん新聞」

「うきはの宝」が今最も力を入れている新規事業が、月に一度発行する「ばあちゃん新聞」だ。1部330円(年間購読料5980円)で、これまでに12000部を売り上げた。(2024年3月末時点)

おばあちゃんのファッションチェック、料理レシピを紹介するコーナーやおばあちゃんの人生を紹介する特集記事など、その名の通り「おばあちゃんが主役」の新聞だ。時には77歳のおばあちゃんが98歳のおばあちゃんを取材することも。

取材するも取材されるのもおばあちゃん

中でも人気なのが人生相談コーナー。若者との言葉のやり取りが面白い。

【19歳の女性からの相談】”友達に悪口を言われました。どう心をコントロールすればいいですか?”

【77歳トキエさんの回答】”そんな時は、ぐっとこらえて「南無阿弥陀仏 南無阿弥陀仏 南無阿弥陀仏」って3回言ってごらん。落ち着くから!”

紙面づくりに関わったり、取材に応じてくれたおばあちゃんには2000円~5000円の謝礼が支払われる。購読料で得た収益が、おばあちゃんたちの報酬に繋がるシステムになっている。