4月20日(土)、台東区三ノ輪の同善会クリニックの中や駐車場で、地域の住民が誰でも参加できる「あおぞらカフェ」というイベントが開かれていて、「調剤喫茶 Farmateria」という小さな屋台が出ていました。屋台の店主は、都内の薬局に勤める薬剤師の石丸勝之さん。石丸さんは休日、街角や「あおぞらカフェ」のようなイベントに屋台を出し、季節に合わせて、漢方やハーブを自分でブレンドしたお茶を無料で提供しています。

病気や薬の悩みごと、困りごとを、ふとこぼせるような場所

「調剤喫茶」の屋台には、透明の容器に入れたお茶の材料が数種類並び、お湯を沸かして、お茶を入れ、小さな紙コップで提供します。入れ替わり立ち替わり訪れる人に屋台のことを聞かれたり、お茶の材料の話で盛り上がったり。「なんで薬剤師さんがお茶を?」と聞いてきた方に石丸さんは「病院とか薬局って入りづらいじゃないですか。本当に相談したいことがあっても、なかなか行けない。じゃ、僕から行こうということで、商店街とかでこうやって、お茶配りながら、お話して、何か役に立てることがあったらお話してもらうっていう活動をしてるんです」と答えていました。

屋台の周りに出した看板には「誰より身近な薬剤師になる!」と書いてあります。さらに、子供の頃、お母さんがいわゆる「近所のおせっかい焼きおばちゃん」で、その姿を見て、自分も「近所の頼れるおっさん」になりたかったと書いてあります。薬剤師になり、病院や薬局に勤めましたが、病気や薬のことを気軽に話してもらえない、患者が壁を感じて話せない状況があることを痛感したということです。垣根を超え、「悩みごと、困りごとを、ふとこぼせるような、何か相談があれば、専門家として答えられる場所」にと始めたのが「調剤喫茶」です。

「あおぞらカフェ」でも「飲んでた神経痛の薬をやめたら、なんか眠れなくなった」とポロっと話した人から普段の生活の状況を聞いて、「それは気にしなくてよいのでは」と答えていました。

平日は、在宅特化型の「まんまる薬局 RWG青砥」に勤め、在宅の患者、主に高齢者に薬を届けながら、休日に様々な場所で屋台を出して2年半ほど経ちますが、石丸さんは「役に立とうとしすぎるよりは、ちょっと待ちの姿勢で僕からの発信を抑えた方が、実際に僕が聞きたかったような悩み事とか困りごとに言及されることが多かったので、最初と比べると、スタンスがかなり変わったなとは思ってます。困り事ありませんかって聞くよりも、聞かない方が、実際は困りごとをこぼしてもらえるんだってことは大きな発見でした」と振り返って話します。