「車は私の足」 保有を認められず…家の中で牢獄のように過ごす毎日
「生活保護を受ける人は車を持つ資格がない」とする今の制度。しかし、それでは生活できない現実も…
(生活保護受給の女性 72歳)
「親の時から使っているから、20年前くらい」
(生活保護受給の女性 72歳)
「保護課に最初に行ったときに『車はダメですよ』って言われた。生活保護を受けてない段階で、車で行ったんだけど、わざわざ私の車を駐車場で見て、『生活保護になったら、ダメですよ』ってはっきり言われました」
鈴鹿市で独り暮らしをする72歳の女性。長年ペットのトリマーとして働いていましたが、仕事の影響で頸椎損傷になり、身体障害者手帳の1級に認定されました。仕事もできなくなり、5年前から生活保護を受けることに。
50メートル歩くことも困難で、玄関にはこんな貼り紙も…
一番近くの駅までは約700メートル。数時間に1本しか来ないバス停までも300メートル離れていて、生活に必要だと車を使っていますが、鈴鹿市は、車の見積書を提出しないことを理由に、生活保護の打ち切りを決定しました。
(生活保護受給の女性 72歳)
「車がなかったら生きていけない。どこへも行けないし、何もできない。家の中で牢獄のように過ごせっていう感じ。車は私の足なんだから、ダメだなんて言わないで下さい」
女性が訪れたのは弁護士事務所。生活保護停止の撤回と車の所有許可を求め、鈴鹿市を提訴していて、ことしの夏に裁判が行われる予定です。
担当するのは、あの81歳の女性の裁判でも弁護した芦葉甫弁護士。
「生活保護受給者は劣悪な暮らしを送るのが当然だ」という考え方が、制度の根底にあるのではないかと話します。
(芦葉甫弁護士)
「本来ならば自分の力で稼いで生活しましょうというところを、税金で生活をしている。そういう人だから、普通に働いて生活している人よりは、低い劣悪な環境で生活してもやむを得ない、そういう考え方が背景にあるんじゃないかと分析している」
「いつ何時だれが、生活保護利用するかは誰も分からない。自分が受けるとなったときに最低限、この制度があれば、暮らしていて良かったなと思える制度がいいかなと思う」
「生活保護受給者の車の所有」をめぐっては、自治体によって運用にバラつきがあるのが実態で、鈴鹿市のすぐ隣の津市では、2417世帯のうち20世帯に車の所有を認めています。
(津市 援護課 水野浩哉課長)
「基本は認められていない中で、どのようにそれを地域の実情に合わせて、認めていくのかっていうのが、それぞれの実施自治体の力量による」