男性は夜だけ女性のもとへ…「結婚」ではなく「通い婚」

さらにユニークなのはモソ族には「結婚」という概念がないことです。

こちらの男性、ショウさんはガータさんの夫にあたりますが、2人は結婚していません。

ショウさん(47)
「私たちは夜だけ一緒に過ごして、昼間はそれぞれ自分の家で過ごすのです」

男性は普段自分の母親の家で暮らし、夜だけ女性のもとを訪れる。いわば「通い婚」です。

ガータさん
「毎日一緒にいると些細なことで喧嘩になりますが、私たちは独立した関係ですから、そういうことはないですね。結婚していないので離婚もありません。お互いに気が合わなくなったら、会わなければいいだけです」

もちろん、家のことを手伝ってもらいたいとき、話がしたいときは昼間でも「夫」は「妻」の家にやってきます。この日も、スズメバチの巣の撤去や家庭菜園の手入れなどを手伝っていました。力仕事は主に男性の仕事だそうです。

子どもが2人いますが、ガータさんの姓を名乗り、ガータさんの家族のもとで育てられています。ショウさんは子育てに責任を負わず、養育費も払いません。

ショウさん
「自分が稼いだお金は、自分の母親の家に入れます。母親の家で一緒に暮らす姉妹の子どもたちのためにお金は使います」

確かにこの制度だと嫁姑問題も発生せず、子どもの親権を争うこともない。「婚外子」もいないし、財産でもめることもない。息子も娘も実家に残るので、親が一人になることもない。極めて合理的な制度に見えます。

「自分の子どもより姉妹の子どもに愛情を感じる」

ガータさんの家には、家長である祖母の息子、つまりガータさんのおじさんが一緒に暮らしています。彼も外に「妻と子ども」がおり、月に2、3回、妻のもとに通っています。

「モソの男は気楽で自由」と笑いますが、子どもの成長を側で見守りたいという気持ちは生まれないのでしょうか?

「私にとって大事なのは、姉や妹の子どもたちの成長を助けることです。もちろん自分の子どもにも愛情はありますが、それ以上に姉妹の子どもに対する愛情の方が深いのです」

家長を女性が務めることについても「女性の方が細やかで思いやりがあり、家をうまく管理できるから」といい、「自分たちが家長になりたいとは思わない」ときっぱり。「母から娘へと家が受け継がれることで、家が分裂したり、財産が分散することもありません。結果、富が集中し、家が豊かになるのですから、良いやり方だと思います」