まっさらなマウンドに立った投手はドラゴンズブルーのユニホームだった。

日本代表「侍ジャパン」栗山英樹監督が指揮を取るゲームで、中日ドラゴンズの根尾昂投手が先発した。

投手に転向して日も浅いながら、背番号「7」の力強い投球に球場は熱くなった。


外野?内野?そして投手へ

「サンデードラゴンズ」より根尾昂投手©CBCテレビ


根尾選手にとっては“波乱万丈”の2022年シーズンであろう。

立浪和義新監督は、就任まもない秋季キャンプで、根尾選手に「外野手1本」と伝えた。


持ち前の強肩と守備力を評価し「打てばレギュラー、守備はライト」と方針は具体的だった。

ところがペナントレースが開幕して1か月ほど経った頃、根尾選手は高校時代から慣れ親しんだ「内野手ショート」に戻ることになる。

内野レギュラー陣の不振がその理由だった。

しかし、本人も切望していたショートだったが、出場機会はほとんどなかった。

そんな中、立浪監督が次なる方針を明らかにした。

「根尾は投手に専念する」。

その決定をめぐっては、野球評論家からファンに至るまで、驚くほどの賛否両論が巻き起こり、連日の話題沸騰となった。

それだけでも「根尾昂」という選手が、いかに注目されているのかを見せつけた“社会現象”だった。

そんな根尾投手が、プロ野球23歳以下選抜チームに選ばれて、栗山監督によって先発に指名された。

圧巻のピッチングで魅了

「サンデードラゴンズ」より根尾昂投手©CBCテレビ


根尾投手にとっては、これが4年目にして“プロ入り初先発”のマウンドだった。

2022年8月1日、酷暑の余韻が日暮れにも残る神宮球場。

根尾選手の投球は、センターに向けて大きく両手を広げるおなじみのルーティーンから始まった。


まず迎えたのは高校時代のジャパンチームで一緒だった左のスラッガー早稲田大学の蛭間拓哉選手。

初球の151キロのストレートに球場はどよめく。蛭間選手をセンターフライに打ち取った。

続く2番打者を空振り三振、3番打者をセカンドゴロ、1イニングを三者凡退に抑えた。

16球を投げて、その多くが150キロを超す速球だった。

“躍動”という表現がぴったりのマウンドさばき、1塁ベンチに戻りながら野手たちに元気に声をかける根尾投手。

そんな姿を見ながら、立浪監督が今回の根尾先発を決めた栗山監督に対して「ありがたい」と感謝の言葉を述べたことを思い出した。

根尾投手にとって、全国注目の舞台での登板と活躍は大きな自信になったはずだ。