認知症になっても様々な生き方が楽しめることを多くの人に知ってもらうため、大分県は当事者本人が認知症に関する情報を発信する「県希望大使」という制度を創設しました。大使として認知症本人や家族を支援している戸上守さんの思いに迫ります。
大分市中戸次のデイサービスを利用している戸上守さん(61)。豊後大野市役所に勤務していた戸上さんは50歳ごろから物覚えが悪くなり、簡単な事務作業でもミスが増えていきました。診断の結果は前頭側頭型の若年性認知症。56歳で休職し、早期退職を余儀なくされました。
(県希望大使・戸上守さん)「仕事をしようと思っても1~2年やった仕事が初めてみたいな感じで、自分が置いていた書類がどこに行ったかわからなくなる。ドツボじゃわな。そして気持ちも落ちたわな。やる気がなくなったわ」
戸上さんは一時、自宅に引きこもる状態でしたが、デイサービスに通ううちに明るさを取り戻していきました。

大きな転機となったのが2021年3月。「県希望大使」に選ばれ、認知症でも楽しく生きられることを多くの人に発信する活動を始めました。

施設の利用者仲間に外出や散歩をすすめるのも大使としての大切な活動です。また、認知症で引きこもった人との対話や講演活動など、当事者だからこそできる支援に力を入れています。
(戸上さんのケアマネージャー吉川浩之さん)「自分が認知症と受け入れらない、否定している人もいるんだけど、戸上さんが "僕、認知症なんですあなたは" と聞くと "僕はアルツハイマーです" と返事があったり、周りの関係者や家族がびっくりするような場面も多々見てきました。戸上さんの思いも強くなり、波及効果も大きくなって、笑顔になり助かる人もどんどん増えていく」

いつも笑顔をふりまき、周りを明るくする戸上さん。希望大使の職責をまっとうする使命感もありますが、それ以上に人の役に立つ喜びが原動力となっています。
(戸上守さん)「役に立たない人間になったと思っていたけど、人のためになるようになったみたいで、自分としても生きている価値があります。みんなにいつも伝えたい言葉があるんだけど、最後にいつも言っている言葉は、認知症は怖い病気ではありません。早期発見・早期治療をすれば認知症になっても幸せに生きることはできるはずです」
