仙台市青葉区に整備された放射光施設「ナノテラス」で、9日から民間企業による利用が始まりました。地元企業などが自社の製品を持ち込みさっそく研究をスタートさせました。
本格的な運用が始まった「ナノテラス」は、放射光とよばれる強力なX線で物質を原子レベルで観察できる「巨大な顕微鏡」のような施設で、民間の企業や研究機関向けに7本の「ビームライン」が整備されました。

大友惇之介記者:
「7本のビームラインはそれぞれ特性が異なり、研究対象に合わせて使い方を変えることができます。こちらではうどんのデンプンの研究が行われています」

登米市に本社がある食品会社は、フリーズドライの麺を持ち込み茹でたてのおいしさや食感を保つための研究を進めていました。

一方、広島県に本社がある化学素材メーカーが持ち込んだのは磁石です。
戸田工業 松岡大取締役:
「こういうのが電気自動車とか、最近の自動車はパワーウィンドウでもなんでもモーターが使われているので、そういうところに多用されています」

放射光で解析することで磁石の内部にN極とS極がどのように分布しているか可視化できると言います。実際、パソコンには、磁石の内部と見られる画像が映し出されていました。今後、画像の解析を進め高性能磁石の開発を進めるということです。

ナノテラスは、食品やプラスチックなどの分析に適している「軟X線」の輝度が世界最高レベルを誇ります。
利用する利府町の企業 TDC 赤羽優子社長:
「今までわからなかったようなことが、ここでわかった。自社の社員も、できればここに何度か通って自分たちで使えるように覚えて、自分たちにとっての新しい武器にできたら」

ナノテラスは、国や県、仙台市、東北大などがおよそ380億円をかけて整備しました。
光科学イノベーションセンター 高田昌樹理事長:
「この施設、国の資源を使って日本の科学技術を大きく変えていく、その始まりがここから出てくると考えている」

ビームラインの利用に加え、専門家から研究やデータ分析のサポートも受けられるということです。