■明かされた「性的暴行」の経験

バドさんは、膝の痛みをこらえながら、一歩、また一歩と、歩みを進めて、寄宿学校があった建物に入った。階段を降り、何カ所かのドアと廊下を通って、その場所になんとか辿り着いた。今も地下1階にあるボイラー室だ。ここで、ある経験を明かした。

ボイラー室で証言するバドさん(78)


9歳のとき、何度か会話をしていたという教職員の男から「ボイラー室を見に行こう」と誘われた。室内に入ると、石炭で湯を沸かすというボイラーの仕組みを説明されたという。そして男は、バドさんを壁に押しつけた。

バドさんは当時と同じ場所に残る、その壁に向かって語った。
「彼は、私を壁に押し付けたんです。何か他のものを見せてくれるのだろうと、私は喜んで壁に向かいました。でも違いました。彼は私の首に指を回し始めました。そして、私のシャツを引っ張り出して、服を脱がし始めました。私は悲鳴を上げていました。私の服、靴、すべてを脱がされました。それから、私を弄んだのです。彼は私の上に覆いかぶさり、私の心は悲鳴を上げていました」

職員の男からの性的暴行だった。恐怖心が今も強く残っているとバドさんは言う。だが性的暴行は、この1回だけではなかった。
ある夜、ベッドで寝ていると、身体に重みを感じたという。そこにいたのは、面識のない職員の男だった。

「すぐには目が覚めませんでした。半分寝ているような状態でした。彼が毛布を取ると、それで目が覚めたんです。その大柄な男は、簡単に私を押さえつけました。うつ伏せにして、下着を脱がされ、何度も、何度も犯されました。私は全力で抵抗しましたが、少年にできることは限られていました」

その後も、同じことが十数回、繰り返されたという。レイプの経験については「恥ずかしさ」から誰にも報告できなかった。初めて語ることができたのは、バドさんが50歳を過ぎてからだった。弟も、性的暴行を受けたことを最近になって初めて告白したという。

世代が少し若いダイアンさんも、こう証言した。
「女の子だけでなく、男の子も多くがレイプされていました」

二人によれば、当時、校内で性的暴行を受けた少女が、校舎の壁のレンガに「Help me」と文字を掘っていたという。だが、そのSOSは外部に届かなかった。モホーク寄宿学校で性的暴行が継続的に横行していたと見られる。調査委員会の報告書によれば、他の寄宿学校でも多数の報告があるとされている。

■「飢え死にしそうだった」

食事や衛生状態も劣悪だった。ダイアンさんが、ある日の食事について語った。器に穀物が入っていた。ぐつぐつと沸騰しているように見えたという。ところが…。

「穀物は、ほとんど温かくなかったのです。なんで沸騰しているのだろうと、よくわかりませんでした。でも熱くない。実は、その中にウジ虫が入っていたんです」

女の子たちはスプーンで一度、口に入れてから、歯を使って虫を取りだして、テーブルの下に押し込んでいたという。

バドさんも常に空腹で、ゴミ捨て場に行き、ゴミのなかから焦げたサンドイッチを拾ってよく食べたという。それでも「飢え死にしそうだった」と話した。
虐待、劣悪な食事などから脱走を試みる子どももいたという。バドさん自身も一度、脱走したがすぐに捕まり、罰として何度も激しく鞭打ちされたと話した。