自販機はビニ本にあらず
一方、自販機で売られていたアダルト本を憶えている「かつての青少年」も多いのではないでしょうか。
自販機は昼間は銀色のスクリーンに阻まれて中が見えません。ところが、夜になると照明が点いて、中にあるアヤシい本が浮かび上がるというシカケです。

では、自販機の中身が「ビニ本」だったかというと、そうではありません。もともと自販機に入っているわけですから、ビニールで包む必要がないからです。自販機のアダルト本は、ビニ本ブームの中、売上で押され、次第に消えていきました。こうなると、買う人は、中身がいいのか、ビニールがいいのか、よくわかりません。
ブームの終焉と「革命的」なスタイル
ブームは80年代半ばに終わります。
相次ぐ摘発ということもありましたが、それ以上にアダルトビデオの出現が凄まじいダメージをもたらしたのだといいます。
しかし、じつはビニ本が出版界においての「革命児」だったことをご存じでしょうか。それは従来の「取次=出版界の問屋」を通さず、出版社から直で小売り(=書店)に卸していた点にあります。

考えてみると、ビニ本は、今の時代の「電子出版(取次を通さない)」の先取りだったという見方が可能です。一方、現代のネットの中には、ビニ本の内容などよりもはるかに過激なわいせつコンテンツが溢れています。「昭和の不適切」は、このジャンルにおいては「この程度のかわいいもの」だったとも言えるのでしょう。