映画草創期に作られたモノクロ無声映画

「映画」という新しい表現が生まれたばかりの時期に作られた無声映画の傑作だと聞き、大学生だった私は早稲田にあった「シアターACT」に観に行きました。1987年ごろのことです。題名は『イントレランス』。1916年公開のアメリカ映画で、題名は「不寛容」を意味します。
監督は「映画の父」と呼ばれるD.W.グリフィス(1875年生~1948年没)。映画の中では、4つの時代の不寛容が描かれます。
▼紀元前6世紀の古代バビロン帝国の破滅
▼2000年前のキリストの受難
▼中世フランスで宗教対立から起きた虐殺
▼現代アメリカでえん罪の青年に下された死刑判決
4つの不寛容が入れ替わり紹介されますが、別の時代に飛ぶ時「揺りかごを揺らす女」が現れます。リリアン・ギッシュが演じるこの女性について、映画は何も説明していませんが、近代日本の社会思想史を学んでいた私には「歴史の女神」のように感じられました。映画『イントレランス』が訴えたのは、「世の中から寛容さが失われた時、悲劇は起こる」「いつの時代も、どの国でも、それは変わらない」ということでした。壮大なテーマに、圧倒されました。