リリアン・ギッシュは100年前の大スター

映画『リリアンの揺りかご』は、もう8年近く前に私がFacebookに投稿した、個人的な文章が端緒となって生まれた、長編ドキュメンタリーです。題名は、映画草創期のスター俳優、リリアン・ギッシュ(1893年生~1993年没)から採りました。リリアンが登場した1916年公開の映画『イントレランス』は、様々な面で映画史上に残る大傑作です。その中で、リリアンは静かに揺りかごを揺らす役を演じています。イントレランスとは「不寛容」という意味です。この映画を私が観たのは、大学生の時でした。この名画をモチーフに、私は現代日本に広がる「不寛容」を描いてみようと思いました。
神戸金史(RKB毎日放送)
やまゆり園事件を起こした植松聖死刑囚

2016年7月、神奈川県相模原市の障害者施設・津久井やまゆり園で45人が殺傷される事件が起きました。私の長男(当時17歳)は、重度の自閉症や知的障害を持って生まれてきました。父である私は、事件を起こした植松聖死刑囚(当時26歳)が発した言葉に、心の内をヤスリで削られているような気分を味わっていました。
「重度の障害者には生きている価値がない」
ネット上では「殺人はいけないが、考え方は分かる」という意見が多数見られ、「誰でも命は尊重されるべきだ」という正論は、冷笑と嘲笑に取り囲まれていました。口の中で、血の味がするようでした。Facebookに1000字余りの文章を書いたのは事件発生から3日後の深夜でした。以下は、その全文です。