バブル期の東京大阪など都市圏の電話ボックスは、一種異様な空間でした。入ったら即、目に入るのは、壁一面のピンクチラシ。名刺大の若い女性の顔に見つめられるアレは、いったいなんだったんでしょう。(アーカイブマネジメント部 疋田 智)
公衆電話はピンクチラシだらけ
憶えてますか、バブル時代の公衆電話の風景を。
ちょうど「テレホンカード」が普及した頃でしたか。壁一面に貼られた名刺大の不適切なチラシの数々。それぞれに若い女性の顔写真と、電話番号が書かれていました。ひとよんで「ピンクチラシ」。あの光景はいったい何だったんでしょう。

剥がしては貼られ、のいたちごっこ
もちろん風俗サービスのチラシです。電話番号に電話をかけた後にホテルに行くと、そこに風俗嬢がやってくるというしかけ。普通のまちの普通の電話ボックス(もちろん未成年も使う)に、こうしたものが平気で貼られていたわけですから、誰もが眉をひそめました。

またあしらわれた女性の顔写真は実在のアイドルやモデルの無断使用で、彼女たちにとって大いにイメージダウンになりました。
NTTや、まちのボランティアたちがシールを剥がす「浄化作戦」を行いましたが、一晩経つと元の木阿弥。文字通りのいたちごっこでした。
貼る側にとっては「コストが少なく儲かる」ということで、繁華街の電話ボックスは、暴力団の縄張りのような形となりました。

ボックス内には「北面と東面は○○組」「南面と西面は××会」などの棲み分けがあったそうです。ときおりケンカの元になり、治安悪化の温床にすらなっていました。