マイナス金利解除の先は 物価2%「見通せる状況」

――日銀が3月か4月のマイナス金利解除に前のめり。この背景をどう見るか。

慶應義塾大学 総合政策学部教授 白井さゆり氏:
経済は停滞気味。消費は物価の高騰で下落しているから、物価と経済の好循環は起きていない。だが、なぜ強く姿勢を出して出口を言うか。インフレは超円安から来ている。それを除いたらほとんどインフレになっていない。インフレの7割が食料。それを除いたら1%いかない。そこが原因なので多少なりとも超円安を減らしたいのではないか。

――実体経済は、2期連続のマイナス成長。鉱工業生産が1月悪かったので3期連続のマイナス成長になるかもしれない。

慶應義塾大学 総合政策学部教授 白井さゆり氏:
消費は重要で、実質消費は物価の高騰によって下落している。実質賃金も減っているから消費者は相当苦しい状況。データから見ると好循環というのはまだ確認できない。

――日銀はどういう理屈で、3月解除とするのか。

慶應義塾大学 総合政策学部教授 白井さゆり氏:
そこが難しいところ。「2%の物価の見通しが見えた」と高田審議委員が言っているが、今の2.2%のインフレのうち7割が食料。それを除くと1%もインフレがいかないので、見通しもなかなか難しく、そこをどう説明するかというのがわかりにくい。大企業中心だが、春闘で2023年かそれ以上の賃金上昇率3.6%を超えてくれば良しと、理由をつけるのではないか。

――物価の動向は「弱い」と。

慶應義塾大学 総合政策学部教授 白井さゆり氏:
食料によってインフレが押し上げられているので、それを除くと、1%のインフレもいかない。食料がなければ、こんなに上がっていない。食料の高騰はもう高止まりに来ているので、インフレ率は下がっていく。なのでこのままいくとだんだんインフレ率は下がっていく。そこで2%を切ってしまうと金融の引き締めの方向に行くことは理が立たない。だから早くした方がいいという判断もあるのではないか。

――米欧が利下げ局面に入ってくる中で、早くやらないと日本は上げられなくなる?

慶應義塾大学 総合政策学部教授 白井さゆり氏:
アメリカなどが利下げをするということは、円高の方向に修正されるので、超円安が終わると意味ではいいと思うが、アメリカの大統領選もあり、市場が非常に振れやすくなるので安定してるうちにやった方がいいという判断ではないか。やるんだったら早くした方がいいが、春闘の結果で4月まで待つのかもしれない。日銀は2%を安定的に実現するまで金融緩和をやると、10年以上言っているが見えない。今はコストプッシュ、食料だけで来ている。今せっかく2%を超えてる間にマイナス金利は非常に批判も大きいので、もうこんなに長くやる必要がないということになれば、早く撤廃するチャンス。

――異次元緩和とかマイナス金利とか10年やって、うまくいかなかったので好循環に入ってきたという理屈をつけている?

慶應義塾大学 総合政策学部教授 白井さゆり氏:
10年間してきた政策もあり、過去にしてきた方のことを引き継いでいるから、大きく否定するのは、難しいのかもしれない。

――マイナス金利を解除して、どこまで利上げするのか。

慶應義塾大学 総合政策学部教授 白井さゆり氏:

短期金利で、マイナス0.1は撤廃されると思う。0とか0.1%になるにしてもそんなに上げるとは考えられない。日本の経済が弱すぎるので、せいぜい1回か2回、最大で0.2%ぐらいの引き上げにとどまると思う。

――長短金利操作、長期金利を0%程度で維持し、事実上1%を上限にする目標は?

慶應義塾大学 総合政策学部教授 白井さゆり氏:
こちら方がずっと大事。長期金利の0%の目標は、もう撤廃すればいいと思う。ただ、1%は目処として残した方がいいと思う。それがなくなってしまうと、国債の需給で金利が動きやすいですからオーバーシュートする可能性もある。企業も金利が上がり、住宅ローンも上がるので、非常に不安定になるから、私でしたら1%の目処を維持して、重要なことは国債の買い入れをどうするか。

――国債管理政策と金融政策をどう組み合わせるかということが、一番肝になってくる。

慶應義塾大学 総合政策学部教授 白井さゆり氏:
マイナス金利解除よりも大事なのは長期金利の目標と国債の買い入れの2つ。

――物価目標2%をこの先どうするか?

慶應義塾大学 総合政策学部教授 白井さゆり氏:
10年以上やってきて、本当の意味での2%は実現できなかったことは総裁も言っている。今も食料を除けば1%いっていないから実現できてない。どこかの段階で例えば1から3%っていうレンジにして3年ごとに見直すという形にすれば柔軟に金融政策ができるから、どこかの段階で政府と相談するっていうのが大事だ。

(BS-TBS『Bizスクエア』 3月2日放送より)