ウソだらけのセールストーク

釧路空港に隣接する原野については「やがて空港の滑走路ができるので、立ち退き料をもらえる」として売った例もありました。もちろん全部ウソ。

「せめて現地に行けば、騙されずにすんだのに」と多くの被害者は悔やんだといいます。

被害者はどういうキッカケで被害を受けたのでしょうか。
Y観光は、東京都内の住宅地で手当たり次第に訪問セールスをしました。
「アンケートの抽選に当たりました。チャンスです」と話を持ちかけました。そして話に乗った人を都内の劇場に無料招待し、北海道現地ツアーと称して「優良分譲地」を見せ、その上で被害者を巧みに信用させたのです。

被害者が無料招待された新宿の劇場(左)とニセモノの北海道「優良分譲地」(右)。

しかし、見せられた分譲地は、まったくのニセモノ。地主に無断でインフラ建設予定の立て看板まで立て、良い土地であるように偽装して、契約を取り付けるものでした。

氷山の一角

白糠町のY観光事件は、いわば「特に悪質だから摘発された」例でした。
「ウソの開発計画を用いた」「ウソの見せ土地を用意していた」「ウソの記事を出してきた」など、明らかな虚偽があったので、最初から騙す目的だったと認定されたのです。

原野商法の被害者(摘発分)は87年だけでおよそ3740人、被害額は136億円。ピーク時には「悪徳土地取引110番」などが設立され、被害者の救済にあたりました

しかし、これがもし次のようなことを囁かれただけだとしたらどうでしょう。
「公的機関による開発の話があります、当社は有望、値上がり確実だとは思いますが、判断されるのはお客さんです…」
この場合、書面は残りません。業者は「そんな約束はしていない」と言い張り、被害者は、自己責任の判断だとされてしまいがちです。
摘発例はいわば氷山の一角。このようにして騙され、結局、泣き寝入りした例は、かなりの数に上ったと言われています。