80年代末のバブル期、地価暴騰のなか奇妙な商売が現れました。その名を「原野商法」といいます。土地をめぐるこうした詐欺商法は、時がやってくると何度でも生き返ります。ゆめゆめご油断めされるな。(アーカイブマネジメント部 疋田 智)
バブル期に「必ず儲かります」
値上がりの見込みなどほぼない山林や原野をもとに「儲け話」をもちかけて実勢価格の何万倍の値付けで買わせ、あとは野となれ山となれ。それがいわゆる「原野商法」です。

なぜそんな話に騙されるヒトが続出したのでしょう。そこには時代背景が大いにものを言っています。戦後の日本が経験した2度の地価暴騰時代に、原野商法は大流行しました。70年代の列島改造ブーム、そして80年代の土地バブルです。
「土地は必ず値上がりする、これから開発される土地なら大もうけだ、乗り遅れるな、北海道ならまだ安い」そういう心に付け込んだのが、この商法でした。

北海道白糠町の例
バブル期の88年、北海道白糠町で、かなり悪質な原野商法の例がありました。
Y観光(摘発済み)という不動産会社が売り込んだ分譲地。その場所に行ってみると、クマザサの生い茂る、文字通りの原野です。

もちろん電気・水道・ガスなど通っていませんし、そもそも道がありません。地価は1坪=数円〜十数円(当時)がいいところ。ところが、そういう原野(山林)を1万倍の坪4,5万円で売っていたというのです。
Y観光は「土地は必ず値上がりする」といいました。ニセモノの新聞記事まで用意する念の入れようでした。

おまけに「そうでなくても、我々(Y観光)が2、3年後には倍の価格で買い戻す」とウソを言い、客を騙していました。客はそれを信じ切ってしまいました。