「ゼロカーボンシティ宣言」という言葉、耳にしたことがある方もいらっしゃると思います。2050年までにCO2排出ゼロを目指そうと自治体が表明する宣言ですが、奄美大島・宇検村もその一つです。小さな村で取り組みが進んでいます。

「家が停電になってもこの車があれば、4日分いつものようにご飯を食べたり、クーラーをつけたりできる」

宇検村で先月、電気自動車について学ぶ教室が開かれました。
子ども達が電気自動車の仕組みについての説明を受けたあと、モデルカーに手動の発電機で電気を貯め、走らせる実験に挑戦しました。会場前には、電気自動車が用意され、発電の様子の見学や、試乗なども行われました。

(参加した小学生)「新しい電気自動車に乗って、スピードも速いのに音も静かですごいなと思った。CO2を減らすためにいろいろ工夫しているのだと知って、すごいなと思った」

宇検村は今年3月、2050年までにCO2排出ゼロを目指す「ゼロカーボンシティ宣言」を表明。自動車メーカーなどと、電気自動車を活用した持続可能なまちづくり連携協定を結びました。脱炭素への取り組みが少しずつ始まっています。

(参加した小学生の親)「(電気自動車の)充電施設があったりするので、村としてもできる限りのことをやっているように感じるが民間はまだ実感がないので、これから民間の方にも脱炭素のことを取り組んでもらえるとすごくいい」

こちらはグリーンスローモビリティと呼ばれる、時速20キロ以下のゆっくりしたスピードで公道を走る5人乗りの電気自動車。地元の言葉で「みんな」で「やろう」=“マジンスローカー”と命名し、今年4月から本格運用しています。

高齢化率が43.2%と、県内の市町村の中で4番目に高く、奄美群島では最も高い宇検村。マジンスローカーは、バスを利用する高齢者がバス停から診療所や役場などへ行くときに使う、交通手段の役割を担っています。

(利用者)「けっこう乗ってるよ。役場行ったりよく乗るの」

環境に配慮した高齢者の足として地元でも浸透し始めていて、村は今後、観光客への活用も検討しています。

(宇検村 辰島月美・企画観光課長)「スピードが出ない・二酸化炭素を排出しないという利点があるので、世界自然遺産登録になった奄美大島には、観光に対しての利用価値があるのではないかと思っている」

さらに、奄美の自然を活用したこんな取り組みも…。

(宇検村 藤貴文・教育委員会事務局長)「ここが子どもたちに植えてもらった場所ですね。植えたらだいたいほぼ残ります」

熱帯や亜熱帯地域の淡水と海水が混ざり合う場所に生息する、マングローブの植林です。宇検村では2014年から、リュウキュウアユの保全活動の一環としてマングローブの一種=メヒルギの苗を植林しています。

近年の研究では、1ヘクタールあたりの年間のCO2吸収量が一般的な森林が5.5トンなのに対し、マングローブは12トンと2倍以上高いことが明らかになっていて、去年からは大手の総合商社と連携し、植林活動を続けています。

(宇検村 藤貴文・教育委員会事務局長)「マングローブの二酸化炭素の吸収量が、ほかの海藻に比べものすごい多いということが分かった」「メヒルギの植林を続けて、二酸化炭素を吸収してもらう」

CO2を極力出さずに出されたCO2も、マングローブで吸収させる。人口1600人あまりの宇検村の、脱炭素に向けた取り組みが進んでいます。