「日系企業を現在の10倍の1万5000社にしたい」

大使は、世界がしのぎを削る半導体や宇宙開発といった先端分野で日本との連携が進むことを期待していると話した。そしてインドに進出している日系企業の数について「現在の1500社から1万5000社にしたい」と力強く訴えた。インドに進出する日系企業の数は近年横ばい状態だが、大使は中小企業も含め10倍にしたいというのだ。
この目標のもとインド大使館は去年7月、大使館内に中小企業のインド進出を支援する「中小企業促進室」を開設した。この時大使は「中小企業促進室」が「急速に成長するインド市場への事業設立と投資に関心のある日本の中小企業に、支援を提供する最初の拠点となる」と説明。「インドは世界で最も急速に成長している経済国の一つで、テクノロジー、製造などの分野で豊富な機会を提供し、進歩的な政策改革によってビジネス環境を一貫して改善し、ビジネスのやりやすさを高めている」とアピールもした。
中国とは「信頼回復なしに友好関係築けない」
外交面でインドは日本にとって重要なパートナーだ。「最大の民主主義国」を自認するインドは日本やアメリカ、オーストラリアで作る枠組み「クアッド」に参加している。「基本的価値を共有し、法の支配に基づく自由で開かれた国際秩序の強化」が目的だ。中国の存在が念頭にあるのは間違いない。

インドは、国境を接する中国との間で領有権をめぐり対立、衝突にまで発展している。こうした係争地を「中国領」とする「新しい地図」を中国が発表した時は猛反発していた。
一方、インドの真南、お膝元とも言える島国モルディブでは、中国からの経済的な支援によりインフラや住宅の整備などが進められ、去年は中国寄りとされる大統領が就任した。新政権は駐留するインド軍の撤退を正式に要請したり、中国との関係を「包括的戦略協力パートナーシップ」に格上げすると表明したりと「インド離れ」を加速させているように見える。インドは、尖閣諸島に対する中国の圧力に直面する日本にとって危機感を共有できる存在と言える。
中国との関係について尋ねると大使は「信頼についての問題だ。信頼関係が回復しない限り、残念ながら友好関係は築けない」と語った。

岸田総理は去年3月にインドを訪問、その2か月後にはモディ首相がG7サミットに合わせて来日した。首脳会談では、経済協力や人的交流などの分野での連携強化で一致している。大使は両国関係を「特別な戦略的グローバル・パートナーシップ」に引き上げてから10年という節目の今年も、モディ首相が来日するとの見通しを示した。