「夫婦同姓しか選べないのは日本だけ」。結婚後も旧姓を使えるようにする「選択的夫婦別姓」の導入を求めて、男女12人が来月、裁判を起こします。選択的夫婦別姓はなぜ必要なのか、戸籍名を妻の名字に変えた「サイボウズ」の青野慶久社長と考えます。
選べないのは日本だけ 子ども・仕事の不安も 夫婦別姓求め 国提訴へ

取材で訪ねたお宅には、「上田」「原田」と、夫婦それぞれの表札が掲げられていました。
都内に住む上田めぐみさんは、「夫婦別姓の選択肢を認めない法制度は憲法違反」だとして、3月に国を訴える予定です。

上田めぐみさん
「夫婦同姓しか選べないのは日本だけなので、海外では絶対に姓を変えない国もあるし、また姓を選ぶことができるのに、おかしいなと。日本の状況を変えないといけないと」

上田さんは2013年に、5歳年上の夫と事実婚を選択。不妊治療の末、2019年に長男を出産しましたが当時、事実婚は不妊治療の助成対象外でした。さらに今後、心配なことがあるといいます。

上田さん
「共同親権がないことなんですよね。事実婚だと父親か母親、どちらかしか親権を持てなくて。今、子どもの親権は私が持っている状況なんですけど、子どもが大きくなる過程で不利益がないかということはいつも心配しています」
また、上田さんはこれまで国際協力の仕事でアフリカや南米で働いてきましたが、今後の働き方についても懸念があるといいます。

上田さん
「海外転勤をする可能性もあるのですが、その場合、夫と子どもを帯同しようと思っても事実婚だと、夫には配偶者ビザがでません」

こうした切実な声がある一方で、夫婦別姓を認めない民法の規定については、2015年と2021年に最高裁が「合憲」との判断を示しています。
選択的夫婦別姓について街の人に話を聞いてみました。
【賛成】
大学生(20代)
「私が別姓になりたいわけじゃないけど、別姓選びたい人がいるんだったら、選択肢として広げるのはいいことかなと思う」
専業主婦(50代)
「免許とか全部、変更手続きをやらなきゃいけなかったのは手間でした」
【反対】
会社員(40代)
「反対です。籍を入れて夫婦で一つになったというのが一番大きいと思っているので。気持ちの問題だと思うんですけど」
提訴を前に上田さんが思いを語ってくれました。

上田さん
「(男性は)『自分の妻が姓を戻したいと言ったらどうするんだ』とか、言葉にならない不安を連想させてしまうのかなという気はします。ただ、社会は変わってきていて、法改正されるまで結婚しない、出産したくないという人たちも現にいる。もちろん私たち世代もですけど、これを10代、20代の世代に引き継ぎたくない」