群馬県は2023年、電車やバスなど公共交通機関の予約から決済まで、スマートフォン一つで完結できるサービス、群馬版のMaaSの提供を始めた。車依存の社会から脱却して、公共交通インフラを維持していけるのか。群馬県の取り組みを取材した。
群馬版MaaSの挑戦 ~クルマ依存から脱却へ~

群馬県にある前橋市役所。ここで住民を対象に、2023年3月に始まった次世代交通サービスMaaSの群馬版「GunMaaS」の相談会が行われていた。
MaaSとは、Mobility as a Serviceの略で、あらゆる公共交通機関のルートの検索から予約、決済までをスマートフォンなどで一括して提供するサービス。

やってきた60代の相談者は「GunMaaSの登録をしていなかったので、それ(相談会)を見てきました。休日とかGunMaaSを使ってバス乗ってみようかな」という。

群馬県は、通勤通学をする人の77.1%が自家用車を利用していて、全国平均の48.2%を大きく上回る。
県民に話を聞くと…「車社会なんです、群馬は。住みにくいですよね、高齢になると。スーパーも徒歩圏内では無いので、車がないとちょっと厳しい」「車がないと公共交通機関の量が少ないので車があった方が行動範囲は広がる」と話す。
群馬県が中心となって運営するGunMaaSには、電鉄5社と59社が加盟するバス協会、そしてタクシー協会が参画。1万人以上が利用している。

目的地までのルートを検索すると、電車と路線バス以外にも、予約できるシェアサイクルやデマンドバスを含むルートが表示され、そのまま予約することができる。
群馬県 交通イノベーション推進課 川上傑氏:
地域の方が普段は知らないことでも、経路検索でヒットすることで、ここにシェアサイクルがあったということが分かると、それで移動ができれば大手とは違うところだと思います。

サービスが始まった当初からGunMaaSを利用しているという下田さん。利用者の予約に応じてルートを変えて走行する「デマンドバス」をほぼ毎日利用している。この日は、前橋市富士見町にある自宅から約7キロ先にあるパート先の「道の駅 まえばし赤城」まで移動。
1日7本走る路線バスを使った場合、前橋駅を経由して道の駅に向かうことになるため、1時間以上かかるが、デマンドバスを使用すると15分で移動することができる。
下田さんは「今、車乗らないし、しかも市街地ではないので(公共交通の)便が悪いし、GunMaaSからデマンドバスの予約をしています。(電話だと)聞き取りが悪いのか自分の思った時間に来てくれなかったり、あとは先に行かれたりするので(スマホ)は間違いないから便利です」という。以前は電話でデマンドバスの予約をしていたが、GunMaaSのサービスが始まってからは、スマホで予約をするようになった。

さらにGunMaaS最大の特徴は、マイナンバーカードと紐付けることで、デマンドバスの運賃210円が100円に割引になること(前橋市民限定)。
メリットは、運営する行政側にもある。
群馬県 交通イノベーション推進課 川上傑氏:
必要な方に必要なサービスを行政側としては提供しなくてはいけない。マイナンバーと紐付けで、どこにお住まいの方がどのサービスを多く使っているか把握することで、より市民の方が使いやすい制度にできる。