群馬版MaaSの新たな可能性 ~さらなる観光客の増加も~

地域住民にとって公共交通の利用を促し、将来の高齢化社会に対応すGunMaaS。群馬県の桐生駅から栃木県の間藤駅を走るわたらせ渓谷鐡道。意外なことに、登録者の半数は県外からの観光客だという。四季折々の景色を楽しむことができ、年間の乗客者数30万人のうち、約8割が観光客だという。
通常切符の購入が必要だが、GunMaaS予約した場合、県が導入したQRリーダーを使って、キャッシュレスで乗車することができる。
わたらせ渓谷鐡道 品川知一 代表取締役社長:
実はうちの鉄道は現金、ほとんど現金扱いです。ローカルの鉄道はそれほど収入がない中で、キャッシュレス化に対する維持費は重荷になるので、なかなか足を踏み出せない。キャッシュレス化の時代に対応する中でGunMaaSはいいなとは思いました。
キャッシュレス対応で、観光客の更なる増加が見込めるという。
わたらせ渓谷鐡道 品川知一 代表取締役社長:
GunMaaSに期待するところは非常に大きくて、それでなおかつキャッシュレスですから、外国人の方も、遠い関西や東京から来る方々も、煩雑なチケット購入の手続きを考えなくてもスイスイこの地域全体が見られるということで、魅力全体をGunMaaSを使って気軽に楽しんでもらえたら嬉しい。
あえてGunMaaSアプリ版を導入しない理由について、開発したJR東日本に聞いてみると…。

東日本旅客鉄道 マーケティング本部 中西良太氏:
旅行に行くときに、このアプリをインストールして下さいというのは、ハードルがなかなか高いと思っている。これがWebだと、インストール不要になるので利用のハードルは低いかと思っていて、それが功を奏している。
国土交通省によると、MaaSを含む新たなモビリティサービスに取り組む市町村は、2022年度で、全国に427ある一方、都道府県で取り組んでいるのは唯一、群馬だけです。

関越交通 企画部 若木亮副部長:
県全体の観光また地域の公共交通の全体の見直しができるのではないかということで群馬県が先頭になってやっていただくことは非常にありがたい。交通の維持、また観光に向けた新たな移動手段という部分で、今後も一緒に連携をしながら、取り組んでいければと思っている。
群馬県はGunMaaSが、今後スピード感を持って浸透するには、県によるリーダーシップが欠かせないといいます。
群馬県 交通イノベーション推進課 川上傑氏:
地域の交通などを担っているのは「基礎自治体」といわれる市町村の方がやっている例が多いので、県で取り組むのは、かなりチャレンジング。ただ、市と市をまたぐような仕組みを整える中だと、群馬県という県が一緒にやることで、仕組み広がりが早く、そして便利になるのかなと思います。公共交通が持続的に将来にわたって効果を発揮できる仕組みにしていきたい。

GunMaaSは元々、前橋市で行っていた「MaeMaaS」を群馬県全域に拡大したもの。現在は電車や路線バス、タクシーの他、前橋市ではデマンドバスやシェアサイクルなども一括して検索、そして予約もできるという便利なシステム。
――予約ができて、決済もできるということですね。

ニッセイ基礎研究所 チーフエコノミスト 矢嶋康次氏:
高齢者もいろいろと出かけなくてはいけないので、こういうシステムがもっと広がることが大事だと思う。群馬の話をみると、仕切り役に県が出てきてすごく大きな枠組みでできているというのと、ITがしっかりしている。すごく使いやすいシステムになっているので、全国に広がるような流れになるといいですね。
――地方は公共交通機関が存続の危機にさらされているが、使いやすくして、人々に使ってもらって、維持していくことが大事。
ニッセイ基礎研究所 チーフエコノミスト 矢嶋康次氏:
民間も含めて考えると今まではずっと長い間、「競争」だったが、これからは「協調」ということが非常に重要になるので、旗振りを県がやることは、すごく大事だと思う。
――車社会であっても、誰でも車に乗れなくなる時が来る。
ニッセイ基礎研究所 チーフエコノミスト 矢嶋康次氏:
現実問題でいろいろ起こっている。こういう対応を急がないといけないと思います。
(BS-TBS『Bizスクエア』2月17日放送より)