小学校の授業は午前中に4時間目まで、午後から5時間目が一般的ですが、鹿児島市の小学校で午前中に5時間目まで授業を行うという、思い切った取り組みが始まっています。どうしてなのか?その理由や狙いを取材しました。
全校児童720人。鹿児島市の広木小学校です。5時間目が始まりましたが、時刻は…まだ正午前。一般的に5時間目は給食や昼休みのあとですが、広木小では先月から午前中におこなっています。
去年12月までの時間割と比べると、午前の授業は4コマから5コマに。時間は5分ずつ短くなりました。
(松元義人教諭)「5分短くなったので何を教えるかという内容をしっかり持たないといけない。子どもの活動を増やせるよう工夫をしている」
タブレットも有効に使い、資料配りや質問・発表に使っていた時間を少しでも省きます。
(松元義人教諭)「(データ上で)子ども同士が直接やりとりもできるので助かる。45分よりも子どもの集中力が増す、やる気が高まっている」
(小学生)「(Q.午前5時間授業は?)おなかが空く」「(Q.集中力は?)高まる」
1コマ5分短縮ですが、学校独自の学習の時間をつくり、子どもたちが1年間に必要な授業時間は従来通り確保できています。
(池浦也寸志校長)「教職員が働きやすい職場、働き甲斐を感じられる職場にする」
改革の理由のひとつが教職員の長時間労働です。県の調査では、およそ7600人いる公立小学校の教職員のうち、国が上限とする月45時間を超えて残業をした人は、全体の19%、1400人余り。全体の1.6%は過労死基準とされる80時間をオーバーしています。
(池浦也寸志校長)「子どもが4時くらいに帰ると勤務時間は45分しか残されていない。そこからあすの準備をして帰るのは難しい」
こちらは6年生の水曜日の時間割です。教職員の勤務時間は午前8時15分から午後4時45分。改革前、子どもたちは午後3時50分に下校でしたが、現在は授業の5分短縮に加え、朝読書の廃止や6時間目を別の日に移すなどして下校時刻は午後2時35分に。
教職員が教材研究などに充てる放課後は55分から2時間10分と、倍以上に増えました。学校の調査では、教員全員(28人)が新しい時間割の方が「よい」と回答しました。
(松元義人教諭)「公務の教材研究の時間も増えるので、ありがたい。すごく働きやすくなっている」
同じ取り組みはすでに横浜市などがおこなっていて、国も「授業短縮で生まれた時間を各校が自由に使い、学校ごとの課題に応じた指導をしてほしい」としています。
広木小学校は週に4日、30分間の「シン広木タイム」として、学習の定着をはかる時間にしました。タブレットを使う子やプリント学習をする子など、それぞれが課題に取り組んでいます。
学校の調査では、子どもたちの84%が「新しい時間割になってよかった」と回答。
(小学生)「帰る時間が早くなるから別にいい」「放課後宿題をする余裕が増える」
一方、「改革前がよかった」と回答した理由の多くは、昼休みについてです。これまで45分あった昼休みは、「あおぞらタイム」として25分に短くなりました。
(小学生)「遊ぶ時間も短いし、掃除の時間も短くなっていろいろ大変」「(45分の)昼休みのほうがいっぱい遊べる」
学校では昼休みが短くなった分、体育館を開放したり竹馬や一輪車の貸し出しを実施。児童らも工夫して遊んでいます。
(小学生)「昼休み短いから目一杯遊ぶぞと思って、いっぱい遊ぶようになった」「一輪車とかも遊べるようになったから、こっちの方が楽しく遊べる」
(あおぞらタイム実行委員会6年生)「この辺一帯はサッカーで遊ぶゾーン、この辺はドッジボールという感じで決めた」
一方で、課題も見えてきました。それは、最大で75分早まる下校時刻です。
(池浦也寸志校長)「共働きの人もいる。帰ったら家で一人ということで、心配という人も」
保護者からは「仕事もある中、子どもの帰宅時間が早まると困る」など、時間割変更への否定的な意見がおよそ70件あったといいます。
希望する児童には、従来の下校時間まで学校に残り宿題などをできるようにしています。
ただ、この対応を続けるのでは、改革になりません。長くなった放課後のより良い過ごし方を検討中です。
(池浦也寸志校長)「子どもにとって不都合・不利益なものであれば、やってはいけない。双方にとって良いと思われることはやり続け改善し、広がっていけば」
教育現場の新しい試みは続きます。
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