雇用統計は弱めの結果、緩やかな成長減速が続く公算

10月2日に公表された9月の米雇用統計は、市場予想を下回る弱めの内容となった。非農業部門雇用者数は前月比2.9万人増にとどまり、失業率は4.2%だった。平均時給の伸び率も前年比3.0%まで鈍化しており、雇用・賃金の双方で労働市場の減速が確認された。

もっとも、今回の結果そのものから強いインプリケーションを引き出すことは難しい。米国では経済成長率が徐々に低下する中、求人件数はコロナ後の極端な人手不足状態と比較すれば低い水準にある。

このため企業が大規模な採用を行う環境ではなくなっており、雇用者数は以前ほど増えにくい。他方で、労働参加率も低水準で推移しているため、仕事を探す人も増えにくく、失業率は低位で安定している。

AIが人間の雇用を代替するとの議論は存在するが、AI導入コストや業務変革の効果は依然として不透明であり、企業が大規模なレイオフに踏み切っている様子も見られない。

むしろ、コロナ後の深刻な人手不足を経験した企業の中には、景気減速局面でも一定の労働者を抱えておく方が経営の安定につながるとの判断が広がっている可能性もある。

「雇用なき成長減速」が続く可能性

そう考えると、今回の統計から読み取るべきポイントは三つある。第一に、失業率が依然として4%台前半にとどまっていることから、米国経済が近い将来にリセッションへ陥る可能性は依然として低いこと。

第二に、雇用者数は明らかに増えにくくなっていること。第三に、平均賃金上昇率の鈍化が継続していることである。

特に後者二つは重要である。雇用者数の伸び鈍化は所得の増勢鈍化につながり、賃金上昇率の低下は家計所得の拡大ペースを抑制する。結果として、個人消費の伸びも徐々に落ち着いていく可能性が高い。

すなわち、米国経済は景気後退ではなく、成長率の緩やかな減速局面にあるとの見方が最も整合的だろう。景気は崩れていないが、加速もしていないという状態である。