(ブルームバーグ):欧州中央銀行(ECB)のシュナーベル理事が早期退任の見通しとなったことで、ラガルド総裁の後任を含むECB要職を巡る争いがますます激しくなりそうだ。
ECBは24日、ドイツ出身のシュナーベル氏は任期をまだ1年残す来年1月に理事を退任すると発表した。3カ月余りの間にECB主要ポストに1つ空席ができることを意味しており、各国政府は早急な対応が必要となった。
ラガルド総裁とチーフエコノミストのレーン氏も2027年に退任予定で、総裁自身も早期退任を示唆している。こうした状況から、ECBトップ人事が一括して決定される公算が極めて大きい。年内に予定される3回の欧州連合(EU)首脳会議で、この人事を巡る駆け引きが繰り広げられることになりそうだ。

こうした人事の決定は、2019年にラガルド氏が任命された際と同様に、各国の対立の場となるリスクをはらむ。約3億6000万人の人口を抱えるユーロ圏の金融政策を主導するECB役員会の半数の席が空く事態に、それぞれが自国の候補の起用を求めるためだ。
ベレンベルクのチーフエコノミスト、ホルガー・シュミーディング氏は「ECB人事の決定は、今や時間的なプレッシャーがある」と指摘。「一括した決定は困難だろう。だが、決定が難しくても解決策を見いだすのが政治家の仕事だ」と述べた。
人事決定の期限が迫る一方で、域内大国は政治的に難しい時期にある。ドイツの与党は州議選での敗北が相次ぎ、メルツ政権は存続が危うい状況だ。フランスは来年春の大統領選挙を前に、政治的な行き詰まりに陥っている。イタリア、スペインも総選挙が近い。

EUのあらゆる決定と同様に、こう着状態に陥る危険も排除できない。シュナーベル氏自身、ブルームバーグが入手したECBスタッフに対する別れのメッセージで、その可能性に言及していた。
シュナーベル氏はその中で「後任はEU首脳会議が指名する」と説明。「自分の退任後、自分の責務は必要に応じて役員会の残りメンバーに一時的に割り振られることになるだろう」と続けた。
同氏の退任は、加盟各国に人事を巡る本格的な交渉開始を促す強いシグナルだ。人事の決定が遅れれば、来年4月のフランス大統領選と時期が重なる恐れも生じる。
ラガルド氏も来年10月の任期満了を待たず早期に退任する可能性が取り沙汰されている。ラガルド氏は、世界経済フォーラム(WEF)のトップに就任するとの観測がくすぶる中、年内に辞任することはないとしか約束していない。
同氏は来年1月に回顧録を出版する予定だが、これは通常、要職を去った後にとる行動だ。
次期総裁を巡る争いは、国連総会が開かれているニューヨークですでに表面化した。最有力候補を抱えているとみられるスペインとオランダの首相はそれぞれ、自国の候補に支持を表明した。

オランダのイェッテン首相は24日、ブルームバーグ・テレビジョンに対し、クノット元オランダ中銀総裁をユーロ加盟国の多くが「完全に適任」とみなすだろうと発言。その前日、スペインのサンチェス首相はデコス元スペイン中銀総裁について、「リーダーシップとキャパシティー、知識を兼ね備えている」と評価した。
ジェフリーズのエコノミスト、モドゥペ・アデグベンボ氏は「すでに協議が始まっているようだ」としつつ、「だが、シュナーベル氏の早期辞任で解決策への合意圧力は高まるだろう」と語った。
ドイツは出身者がECB総裁職を一度も務めたことがなく、ナーゲル独連銀総裁は次期ECB総裁に意欲を示しているが、政治的対立に悩まされているメルツ首相は、連立パートナーである社会民主党(SPD)に近いナーゲル氏に懐疑的な様子だ。
ドイツ出身者は既にEUレベルの他の要職2つを占めている。EU委員会のフォンデアライエン委員長と、ECB銀行監督部門トップのブッフ氏だ。それでもドイツ出身者が有力候補に挙げられていた過去2回の総裁交代時と比べ、政府の意欲の欠如は対照的ですらある。
総裁ではなく、次期チーフエコノミストの地位にドイツは関心があるだろうと、事情に詳しい関係者は8月にブルームバーグに述べていた。ただ、この職はフランスも狙っている。
原題:Lagarde Succession Race at ECB Is Heating Up as Schnabel Exits(抜粋)
--取材協力:Francine Lacqua、Daniel Basteiro、David Gura、Patrick Van Oosterom、Bridget Brown.もっと読むにはこちら bloomberg.com/jp
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