(ブルームバーグ):主要国の国債が売り込まれる中、JPモルガン・アセット・マネジメントやブラックロックなどが運用するファンドは、新興国市場に投資妙味を見いだしている。
米国や日本など先進国の国債は下落している。エネルギー価格に起因するインフレと財政懸念を背景に、金利がさらに上昇する可能性が再び意識されている。一方、新興国の多くは、インフレが比較的抑制されていることや、既に引き締め的な金融政策、一部の国のより健全な財政状況に支えられ、深刻な債券売りを免れている。
新興国の一部は、高い実質金利と健全な財政状況により、投資家にとってインカム収益を確保できるだけでなく、主要債券市場を揺さぶる相場変動を乗り切る投資先となっている。
JPモルガン・アセット・マネジメントで新興国債券部門を担当するピエール・イヴ・バロ最高投資責任者(CIO)は、最近の世界的な債券売りについて、「新興国市場はインカム収益の分散先として機能するため、魅力が増している」と述べた。

ブルームバーグがまとめたデータによれば、現地通貨建て新興国債券は今年に入り3%超のプラスのリターンを上げている。一方、米国債と欧州国債は0.6%のマイナスとなっている。
マニュライフ・インベストメント・マネジメントの新興国債券ポートフォリオマネジャー、エリナ・テオドラコプル氏は「これはこの資産クラスの底堅さを物語っている」とし、最近の債券売りについて「世界の新興国債券にとって相対的な投資機会」とみていることを明らかにした。
先進国とは対照的に、新興国の中央銀行は独自の政策運営を進める余地が大きい。JPモルガンによると、新興国全体のインフレ率は平均3.8%で、2022年のインフレショック時の約3分の1の水準にとどまっている。同社は、当局が物価上昇圧力を吸収できる余地は4年前と比べて約1ポイント大きいと推計している。
そうした柔軟性は既に顕在化している。ブラジル、トルコ、ハンガリーの各国は8月に政策金利を引き下げた一方、韓国とフィリピンは引き締めに動いた。チェコ中銀は6月に利上げした後、政策金利を据え置いた。
ティー・ロウ・プライスの新興国担当チーフ・マクロ・ストラテジスト、クリス・クシュリス氏は、「多くの新興国ではインフレがなお抑制され、成長率も潜在成長率付近かやや下回る水準にあるため、先進国の債券売りに直面しても、現地通貨建て債券の金利は比較的安定的に推移するだろう」と述べた。同氏のチームはブラジル、ハンガリー、メキシコ、南アフリカの現地通貨建て債券を選好している。
ブラックロックの新興国債券部門責任者、ミシェル・オーブナ氏は、中銀が政策金利を据え置くことで投資家の予想を覆すと見込む国の債券を投資対象としている。
ブラックロックは、当局が利上げを迫られることはないとの見方から、チェコ市場を選好している。市場は今年末までに25ベーシスポイント(bp、1bp=0.01%)の利上げ1回、27年半ばまでに計100bpの利上げを織り込んでいるが、ソシエテ・ジェネラルはチェコ中銀が当面、政策金利を3.75%に据え置くと予想している。
このほかソシエテ・ジェネラルのストラテジスト、フアン・オルツ氏は、ポーランド中銀が25bpの利上げを3回実施するとの市場の見方も行き過ぎだと論じている。
JPモルガンのバロ氏は「市場は常に織り込み過ぎる」と指摘。同氏が運用するファンドは現地通貨建て債券と投機的格付けのソブリン債を選好している。「一部の中銀がインフレに対応して利上げするとしても、市場が織り込んでいる利上げ幅の全てを実施することはない」との分析を示した。
過去の実績も一定の安心材料となる。米連邦準備制度の金融引き締め局面でも、金利上昇の背景がインフレや財政不安ではなく力強い成長にある場合、新興国債券は総じて良好なパフォーマンスを上げてきた。
新興国経済の成長率は今年、3.7%前後で安定的に推移する見通しだ。こうした成長が財政の改善を後押しし、アルゼンチン、ガーナ、ナイジェリアなどでは信用格付けの改善傾向につながっている。これに対し、歳出が膨らむ先進国政府では財政面の圧力が強まり、国債利回りを押し上げている。
ユニオン・バンケール・プリベのトーマス・クリスチャンセンCIO兼新興国債券部門責任者氏は、「先進国全般の放漫財政により、新興国市場の投資妙味が増している」とコメント。「過去数週間の先進国債券市場の動きは、ある程度これを反映したものだと考えている」と話した。
原題:BlackRock to JPMorgan Bet on EM as Turmoil Seizes Global Bonds(抜粋)
--取材協力:Peter Laca、Srinivasan Sivabalan、Mpho Hlakudi.もっと読むにはこちら bloomberg.com/jp
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