(ブルームバーグ):海上輸送に対するイランの脅威が長引く中でも、ホルムズ海峡を通る原油量は緩やかに増加している。中東の産油国は輸出を拡大させ、世界の原油価格の上昇を抑えている。
貨物輸送に関与し、その動向を継続的に注目している石油トレーダーの推計によると、直近でホルムズ海峡を通過する原油は日量およそ600万-800万バレルに上る。7月にはイランが超大型タンカーを相次いで攻撃し、暫定和平合意が事実上崩壊して航行リスクが高まったため、輸送量は減少した。600万-800万バレルでも、米国とイスラエルがイランに戦争を仕掛けた2月末以前の水準に比べ、約半分にとどまる。
推計値には幅があり、変動も激しい。政情はなお不安定だが、一部のデータや米当局者は、これよりも多くの原油が通過していると示唆している。
英海軍によると、24日も2隻の船舶が攻撃を受け、海峡通過に依然として重大な危険があることを浮き彫りにした。それでも通過に成功すれば、船主にとっては超大型タンカー市場で史上最高の収益が待っており、これが輸送量の増加を支えている。
いずれにせよ、過去数日間に中東の産油国が原油輸送を増やしている兆しが見られている。各産油国は、自国の港からホルムズ海峡の外側までを往復するシャトル船団を用意。この船はホルムズ海峡を通過した後、海峡通過になお慎重でその外側で待っている別のタンカーに積み荷である原油を引き渡す。
イランを除くペルシャ湾岸の主要産油国は全て、いまやこの方法で原油を販売している。
海運分析会社シグナル・マリタイムの貨物輸送アナリスト、ゲオルギオス・サケラリウ氏は「ここ数日、ホルムズ海峡から出て行く原油が増えているようだ」と指摘。「これが持続できるなら、原油価格は低水準にとどまるだろう。もっとも、最近ではそれでも1バレル=85ドル近辺ということになる」と語った。
27日の取引で、北海ブレント原油先物は1バレル=88ドル前後。暫定的な停戦によって原油輸送が維持されていた6月下旬以来、週間では最大の下落となる方向だ。
ホルムズ海峡を巡る合意を目指した新たな外交努力も、今週の原油価格の上値を抑えている。欧州最大の石油精製会社トップは今週、原油がひそかにホルムズ海峡から運び出されていることなどを理由に、原油価格の先行きに弱気な見方を示した。
先週後半にペルシャ湾内に入る船舶が急増したことで原油の積み出し量を増やすことが可能になったが、今後数週間にわたってこのペースを維持できるだけの船舶が過去数日にさらに湾内に入ったかどうかは明らかではない。
ブルームバーグが入手した衛星画像によると、サウジアラビアのペルシャ湾岸の石油輸出港には25日、過去数週間見られていなかった数のタンカーが集まっていた。その前日には、イラクの同湾岸輸出港の積み込み活動が一時、戦争前の水準さえ上回った。カタールやクウェートなど比較的規模の小さい産油国も輸送量を増やし始め、この流れを後押ししている。
ただし、これはサウジアラビアの総輸出量が増加しているという意味ではない。ペルシャ湾からの輸出が増加するとともに、紅海側からの輸出は減少している。同時にサウジは、貯蔵施設を保有するエジプトの地中海沿岸の港シディケリルからも積み込みを増やしており、同国の原油輸出の実態把握を困難にしている。
ペルシャ湾軽油で輸出された中東産原油が、全て顧客に向かっているのかどうかも定かではない。通常はオマーンのソハール港やアラブ首長国連邦(UAE)のフジャイラ港付近で待機している船舶に積み替える必要があり、この作業には数日かかることがある。
船舶の追跡を行うタンカートラッカーズ・ドット・コムは、船舶が米国の封鎖線を通過した時点で世界市場向けの出荷としてカウントしている。衛星画像の迅速な利用には制約があるため、船舶自動識別装置(AIS)の信号を基に試算したところ、過去7日間にホルムズ海峡経由で世界に向けて輸出された原油は日量370万バレルにとどまっていると、同社の共同創業者であるサミル・マダニ氏は説明した。
原題:Hormuz Oil Flows Rise as Gulf Ramp Up Accelerates (Correct)(抜粋)
(原文訂正に伴い、第9段落の外交的取り組みに関する表現を訂正します)
--取材協力:Prejula Prem、Weilun Soon、Serene Cheong、Anthony Di Paola、Nayla Razzouk、Grant Smith.
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